この記事のポイント
- 月次決算が遅れる原因は、作業量よりも請求書や精算の「待ち」
- 締め日から逆算した5営業日のチェックリストで、止まっている工程を見つける
- 未払費用・前払費用・減価償却の決算整理仕訳を毎月入れて、損益を正しく見る
月次決算が毎月ずるずる延びる会社では、作業量が多いというより「何を、いつ、どこまでやれば締め完了か」が決まっていないことがほとんどです。
この記事では、締め日から逆算した日程つきのチェックリストと、月次で必ず出てくる決算整理仕訳の具体例をまとめました。また、自社の実情に合わせて書き換えれば、そのまま手順書として使えます。
締めが遅れるのは「待ち」が原因
実務では、経理担当者が手を動かしている時間より、請求書や経費精算の提出を待っている時間のほうが長くなりがちです。
月末にまとめて入力するやり方では、1枚でも証憑が遅れた時点で全体が止まります。そこで取るべき対策は、次の3つに集約できます。
- 提出期限を日付で決める経費精算・請求書の社内提出期限を「翌月第2営業日」などと日付で決め、全社に周知する
- 明細は週1回登録する銀行・クレジットカードの明細は会計ソフトの自動取り込みを使い、週1回は仕訳登録まで済ませておく
- 見積額で計上する金額が確定しない取引は、見積額で計上して翌月に差額を調整するルールにしておく
ポイント
3つ目が特に重要です。確定を待たずに見積額で計上すると、締めの日程が他部署の都合に左右されにくくなります。
経費精算の流れそのものを見直したい場合は、経費精算の仕組みづくりも参考にしてください。
日程つき月次チェックリスト
例えば、翌月5営業日で締める場合は次のようになります。なお、「営業日」は翌月の営業日を指します。
- 月中(毎週)銀行・カード明細の取り込みと仕訳登録未登録の明細が残っていない
- 月末日現金実査、小口現金の締め現金出納帳の残高と手元現金が一致
- 1営業日売上の計上(請求書発行分・未請求分)出荷・役務提供済みで未請求のものがない
- 2営業日仕入・経費の計上、経費精算の締め届いていない請求書は見積額で未払計上
- 3営業日決算整理仕訳(未払・前払・減価償却・賞与引当など)毎月同じ仕訳が漏れなく入っている
- 4営業日残高照合(預金・売掛金・買掛金・仮払金・仮受金)通帳残高、取引先別残高と一致
- 5営業日前月比・予算比の増減分析、報告大きな増減に理由を説明できる
この日程を表にして担当欄と完了日欄を足し、毎月記録すると、ボトルネックが見えてきます。
まずは記録から
いきなり5営業日を目指す必要はありません。まずは現状、締めまでに何営業日かかっているかを3か月ほど記録し、どの行で止まっているかを確認します。
多くの場合、止まっているのは1〜2営業日の「計上」の段階で、原因は社内の提出遅れです。止まる場所が分かれば、提出期限の周知や見積計上のルール化など、打つ手が具体的になります。
毎月入れる決算整理仕訳の例
月次で損益を正しく見るには、支払った月・請求書が届いた月ではなく、費用が発生した月に計上する必要があります。
以下では、よく使う3パターンを金額を置いて示します(消費税の処理は省略しています)。
未払費用:当月分の電気代の請求が翌月に届く
例えば、9月使用分の電気代が約42,000円と見込まれるが、請求書は10月中旬に届くケースです。その場合は、前月実績などから見積額で計上します。
未払計上
確定額 43,100円
追加計上
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 水道光熱費 | 42,000 | 未払費用 | 42,000 |
または、翌月初めに逆仕訳を入れて、確定額で通常どおり計上する方法でも構いません。ただし、どちらかに統一しておくことが大切です。
前払費用:1年分の保険料を一括で支払った
4月に1年分の損害保険料120,000円を支払った場合、支払時に前払費用へ計上し、毎月10,000円ずつ費用に振り替えます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 前払費用 | 120,000 | 普通預金 | 120,000 |
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 保険料 | 10,000 | 前払費用 | 10,000 |
注意
税務上は一定の要件を満たせば、支払時に全額を費用にできる取扱い(短期前払費用)もあります。月次で平準化するかどうかは、顧問の税理士と方針を決めておくと迷いません。
減価償却費の月割計上
まず、期首に固定資産台帳から当期の年間償却予定額を出しておき、12で割って毎月計上します。たとえば年間予定額が1,044,000円なら、月額は87,000円です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 87,000 | 減価償却累計額 | 87,000 |
また、期中に資産を取得・売却した月は台帳を更新し、月額を見直します。そのうえで期末に台帳の年間確定額との差額を調整すれば、月次の数字と決算の数字がずれません。
残高照合でよく見つかる差異
4営業日の残高照合では、次のような差異が現場でよく見つかります。
| 差異 | 起きること・対処 |
|---|---|
| 預金利息の源泉税の処理漏れ | 法人の預金利息は、所得税・復興特別所得税15.315%が差し引かれて入金されます。(参考:国税庁「令和8年版 源泉徴収のあらまし(利子所得の源泉徴収事務)」)仮に利息1,000円なら源泉税153円(1円未満切り捨て)、入金は847円です。入金額だけで受取利息を計上すると、差し引かれた税額を法人税の申告で控除する際の集計が漏れます。計算は預金利息の源泉所得税計算ツールで確認できます。 |
| 振込手数料の差引入金 | 売掛金55,000円に対し54,340円の入金。差額を支払手数料として処理するか、取引先に確認するかのルールを決めておきます。なお、取適法(旧下請法)・フリーランス法の対象取引では、取引先が代金から差し引くこと自体が問題になり得ます。 |
| 仮払金・仮受金の放置 | 内容不明のまま翌月に繰り越さず、月内に本来の科目へ振り替えます。 |
加えて、消費税の中間申告をしている会社は、中間納付した月に仕訳を入れる際、国税分と地方消費税分の内訳も控えておくと期末の集計が楽になります。内訳は消費税中間納税額の国税・地方税分解ツールで出せます。
月次でよくある間違いと防ぎ方
未払計上した費用を、請求書到着時にもう一度計上
費用の二重計上
逆仕訳方式か差額方式かを決め、未払費用の残高を毎月ゼロ確認する
前払費用の振替を忘れる
ある月だけ費用がゼロ、期末に一括で膨らむ
会計ソフトの定型仕訳(繰り返し仕訳)に登録しておく
締め後に前月の仕訳を修正
報告済みの数字と帳簿が食い違う
締め後は当月で修正する運用にし、ソフトの月次ロック機能を使う
カード明細の利用日と引落日の混同
費用の計上月がずれる
利用日で費用計上し、引落日は未払金の消込として処理する
「締め完了」の基準を決める
「締め完了」の基準も文章で決めておきましょう。たとえば次のように定義すると、担当者が変わっても判断がぶれません。
預金・売掛金・買掛金の残高が外部資料と一致し、仮払金・仮受金の残高に内容不明のものがなく、増減コメントを報告した時点
証憑をスキャンして保存する運用にしておくと、照合時に紙を探す時間も減ります。手順はペーパーレス経理の5ステップにまとめています。
増減分析は「一言コメント」まで
最後に、5営業日の作業で大切なのは、数字を並べるだけで終わらせないことです。
具体的には、前月比で一定の割合や金額を超えて動いた科目に、理由を一言添えます。
広告費:展示会出展費用の計上による
理由を書けない増減は、計上漏れや二重計上のサインであることが多いものです。そのため、一言コメントには締め後の修正を減らす効果もあります。
毎月これを続けておけば、年次決算で慌てて過去の月を掘り返す作業もほとんど不要になります。
よくある質問
月次決算を早く終わらせるにはどうすればいいですか?
締めが遅れる主な原因は作業量よりも請求書や経費精算の「待ち」なので、提出期限を日付で決め、明細は週1回登録し、金額が確定しない取引は見積額で計上します。確定を待たずに見積額で計上すると、締めの日程が他部署の都合に左右されにくくなります。
月次決算のチェックリストには何を入れればいいですか?
翌月5営業日で締める場合、1営業日に売上の計上、2営業日に仕入・経費の計上と経費精算の締め、3営業日に決算整理仕訳、4営業日に残高照合、5営業日に増減分析と報告を行います。あわせて、月中に銀行・カード明細の取り込みと仕訳登録、月末日に現金実査と小口現金の締めを済ませておきます。
月次決算で毎月入れる決算整理仕訳には何がありますか?
よく使うのは未払費用、前払費用、減価償却費の月割計上の3つです。支払った月や請求書が届いた月ではなく、費用が発生した月に計上することで、月次の損益を正しく見られます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務等の個別の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。
