経費精算をラクにする仕組みづくり:申請ルール・仕訳・承認チェックの整え方

経費精算をラクにする仕組みづくり:申請ルール・仕訳・承認チェックの整え方

この記事のポイント

  • 経費の種類ごとに申請に必須の記載を決めると、確認のやりとりと差し戻しが減る
  • 締め日・支払日・承認段数を固定し、立替精算は未払金・仮払金で仕訳する
  • インボイスの登録番号と特例、承認時の重複チェックまで経理の確認項目を決めておく

経費精算で経理の時間を奪うのは、実は金額の計算よりも「この領収書は何の費用ですか」「一緒に行ったのは誰ですか」といった確認のやりとりです。

確認が発生するのは、申請時に書くべき項目が決まっていないからです。

この記事では、申請ルールの書き方、精算の仕訳、承認時のチェック項目を、そのまま社内規程やマニュアルに写せる形でまとめます。

経費の種類ごとに「必須の記載」を決める

「目的を書いてください」という抽象的なルールでは、人によって書く内容がばらつきます。

そこで、経費の種類ごとに必須項目を表にして配ると、差し戻しが減ります。

経費の種類申請に必須の記載添付するもの
電車・バス代日付、区間(例:新宿→横浜)、往復か片道か、訪問先不要(ICカード利用履歴があれば添付)
タクシー代日付、区間、利用理由(荷物・時間帯など)領収書
打合せの飲食代相手先の会社名・氏名、参加人数、1人当たり金額領収書
備品・消耗品品名、数量、使う部署や目的領収書または購入明細
出張の宿泊費出張先、用件、宿泊日領収書または予約確認書

飲食代で参加者と人数を必須にする理由

なお、打合せの飲食代で参加者と人数を必須にしているのは、法人税で、1人当たり10,000円以下の飲食費(2024年4月1日以後に支出するもの。社内の人だけの飲食は除く)を一定の事項の記載を条件に交際費から除外できる取り扱いがあるためです。(参考:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」)

申請の時点で情報がそろっていれば、決算で慌てて聞き直す必要がなくなります。

締め日・支払日・承認段数を固定する

  • 締め日と支払日を固定する(例:毎月末締め・翌月10日払い)
  • 締め日を過ぎた申請は翌月回しにし、例外を作らない
  • 承認は「上長→経理」の2段階までにする
  • 支払いは申請者ごとに合算し、総合振込でまとめて送信する(総合振込)

支払いを月1回にまとめると、振込の件数と作業回数を同時に減らせます。なお、振込手数料は利用している金融機関の最新の手数料表で確認してください。

申請から支払いまでの流れ(月末締めの例)

  1. 申請者:撮影して申請経費を使ったら、その週のうちに領収書を撮影し、必須項目を入力して申請する
  2. 上長:必要な支出かを承認業務上必要な支出かを確認して承認する(金額の細部は経理に任せる)
  3. 経理:科目と税区分を確定月末の締め後、領収書と申請内容を突き合わせ、勘定科目と税区分を確定する
  4. 経理:未払金として計上申請者ごとの合計額で精算一覧を作り、会計ソフトに未払金として計上する
  5. 経理:総合振込で支払い支払日に総合振込データを作成し、責任者の承認を得て送信する

確認する観点を分ける

上長と経理で確認する観点を分けておくと、同じ点を二重に見る無駄がなくなります。

上長は「その支出が必要だったか」、経理は「証憑と記載がそろっているか」を担当する、と役割を決めておきましょう。

そもそも立替を減らす:支払手段の比較

精算作業を最も減らすのは、社員が自腹で立て替える場面そのものを減らすことです。

そこで、支払手段ごとの特徴を比べ、経費の種類に合わせて使い分けます。

支払手段経理の手間向いている経費注意点
社員の立替申請・承認・振込がすべて必要突発的な少額の支出精算が遅れると社員の負担になる
法人カード明細を会計ソフトに連携すれば入力が減る出張の交通・宿泊、定額のWebサービス利用者と利用目的の記録は別途必要
小口現金残高の実査と出納帳の記帳が毎日必要現金しか使えない支払い帳簿残高と手元残高のずれが起きやすい

法人カードを使う場合も、領収書や利用目的の記録が不要になるわけではありません。カード明細は「いつ・いくら・どこで」を示すだけです。

そのため、何のための支出かは申請と同じ項目で記録を残します。

また、カード明細の連携や、無料で使える精算まわりの道具は「経理の無料Webツール」も参考にしてください。

立替精算の仕訳例(税込経理の場合)

例えば、社員Aさんが9月中に次の経費を立て替え、9月末締めで申請したとします。

電車代3,960円、打合せの喫茶代2,200円、文具1,650円で、合計は3,960円+2,200円+1,650円=7,810円です。

承認された締め日に費用を計上し、支払うまでは社員への未払金にしておきます。

9/30 の仕訳
借方金額貸方金額
旅費交通費3,960未払金(A)7,810
会議費2,200
消耗品費1,650
10/10 の仕訳
借方金額貸方金額
未払金(A)7,810普通預金7,810

一方、出張などで先にお金を渡す場合は仮払金を使います。

50,000円を仮払いし、実際にかかった交通費と宿泊費が43,200円だった場合、差額は50,000円−43,200円=6,800円で、これを本人から現金で戻してもらいます。

仮払い時50,000円を
仮払い
出張後交通費と宿泊費
43,200円
精算時差額 6,800円を
現金で戻してもらう
仮払い時
借方金額貸方金額
仮払金50,000現金50,000
精算時
借方金額貸方金額
旅費交通費43,200仮払金50,000
現金6,800

仮払金を月末に残さない

仮払金が月末に残ったままだと、月次決算で残高の説明ができなくなります。出張から戻って1週間以内に精算する、といった期限を決めておきましょう。

また、月末の確認項目は「月次決算チェックリスト」にも入れておくと漏れません。

インボイス制度で経理が確認すること

消費税の仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書(インボイス)の保存が必要です。このため、領収書に登録番号(T+13桁)があるかを経理で確認します。

一方、次のものは帳簿への記載だけで控除できる特例(帳簿のみ保存の特例)があります(2026年9月時点)。(参考:国税庁「インボイス制度の理解のために」)

  • 電車・バスなど公共交通機関の運賃で税込3万円未満のもの
  • 社員に支給する出張旅費・宿泊費・日当のうち、通常必要と認められる部分

ただし、この帳簿のみ保存の特例を使う場合、帳簿には特例の対象である旨の記載が必要になるため、会計ソフトの摘要欄の書き方を事前に決めておきます。

摘要欄は、例えば次のように、日付・支払先・内容・利用者・特例名の順で書くルールにすると、担当者が変わってもそろいます。

9/12 JR 新宿→横浜 往復 A 公共交通機関特例

これとは別に、基準期間の課税売上高が1億円以下などの事業者は、2029年9月30日までの取引について税込1万円未満の経費をインボイスなしで控除できる少額特例もあります。(参考:国税庁「少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)の概要」)

少額特例は帳簿のみ保存の特例とは別の制度で、帳簿に「特例の対象である旨」を書く要件はありません(通常の帳簿の記載事項は必要です)。

よくある間違い

よくある間違いは、登録番号のない領収書を特例の対象か確認しないまま通常どおり控除してしまうことです。

登録番号がなく特例にも当たらない場合は、経過措置の扱いを含めて税理士に確認しましょう。

承認者のチェックリストと二重申請の防ぎ方

確認項目見るポイント
日付締め対象の期間内か、休日の利用なら理由があるか
金額申請額と領収書の金額が一致しているか
内容必須の記載が埋まっているか、私的な購入が混じっていないか
重複同じ日付・同じ金額・同じ店の申請が過去にないか

重複の確認は、精算データをExcelに集め、日付・金額・支払先の3列が同じ行を数える関数で探すと手早く済みます(経理のExcel術)。

また、紙の領収書は、スキャンして画像を申請に添付し、原本に「精算済」と書いておくと再提出を防げます。

ただし、スマホで撮影した領収書画像を紙の代わりに保存する場合は、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たす必要があります。取り込み時の設定やファイル名の付け方は「紙書類のデジタル化」で詳しく紹介しています。

なお、経費精算を含めた経理全体の電子化の進め方は「ペーパーレス経理5ステップ」をご覧ください。

よくある質問

経費精算の申請ルールには何を書けばいいですか?

経費の種類ごとに、申請に必須の記載を決めて表にして配ります。例えば電車・バス代は日付・区間・往復か片道か・訪問先、打合せの飲食代は相手先の会社名・氏名、参加人数、1人当たり金額を必須にします。「目的を書いてください」という抽象的なルールでは人によって書く内容がばらつくため、差し戻しの原因になります。

立替経費の精算はどんな仕訳になりますか?

承認された締め日に費用を計上して社員への未払金にしておき、支払日に未払金を普通預金で消します。出張などで先にお金を渡す場合は仮払金を使い、精算時に実際の費用を計上して差額を戻してもらいます。

領収書に登録番号がなくても仕入税額控除できる経費はありますか?

あります。税込3万円未満の公共交通機関の運賃や、社員に支給する出張旅費・宿泊費・日当のうち通常必要と認められる部分は、帳簿への記載だけで控除できる特例があります。また、基準期間の課税売上高が1億円以下などの事業者は、2029年9月30日までの取引について税込1万円未満の経費をインボイスなしで控除できる少額特例もあります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務等の個別の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。