フリーランス・個人事業主のための請求書の作り方と無料テンプレート活用

フリーランス・個人事業主のための請求書の作り方と無料テンプレート活用

この記事のポイント

  • 登録事業者の請求書にはインボイスの必須記載事項があり、抜けは差し戻しの原因になる
  • 源泉徴収がある報酬は100万円以下10.21%・超える部分20.42%で計算し、請求書に差引額まで書く
  • 番号・ファイル名・保存のルールと、送付から催促までの手順を先に決めておく

請求書に法定の書式はありませんが、実は項目が一つ欠けるだけで取引先の経理処理が止まり、支払いが翌月に回ることがあります。

特に2023年10月のインボイス制度開始以降、登録事業者の請求書には記載が必須の項目があり、「書いてあるつもり」の抜けが差し戻しの原因になりがちです。

この記事では、コピーして使える請求書のテンプレート(記入例つきのひな形)、源泉徴収がある場合の計算と仕訳、番号・送付・催促の決め方を順に整理します。

記入例つき・請求書の項目一覧

まず、下の表をそのままひな形の項目として使ってください。なお、「インボイス」欄が◎の項目は、適格請求書として必須の記載事項です(2026年9月時点)。(参考:国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」)

項目記入例インボイス
宛先株式会社〇〇 経理部 御中◎(名称)
発行者屋号・氏名・住所・メール◎(氏名または名称)
登録番号T+13桁の数字◎
請求書番号2026-09-003任意(管理上必須)
発行日2026年9月30日任意
取引年月日2026年9月分(月まとめ可)◎
取引内容Webサイト改修 デザイン一式◎
税率ごとの合計と適用税率10%対象 300,000円◎
税率ごとの消費税額消費税(10%) 30,000円◎
軽減税率対象の表示「※印は軽減税率(8%)対象」◎(該当品目がある場合)
源泉所得税▲30,630円対象取引のみ
振込先・支払期限〇〇銀行 〇〇支店 普通 口座番号/10月31日任意(実務上必須)

完成形のテンプレート(記入例)

上の項目を1枚の請求書にまとめると、次のようになります。表計算ソフトにコピーし、〇〇の部分を自分と取引先の情報に書き換えて使ってください。源泉所得税の行は対象となる報酬の場合だけ入れます(計算は次の章で説明します)。

欄記入内容
表題請求書
宛先株式会社〇〇 経理部 御中
請求書番号・発行日No.2026-09-003/2026年9月30日
発行者〇〇(屋号) 氏名・住所・メール
登録番号T+13桁の数字
取引年月日・内容2026年9月分 Webサイト改修 デザイン一式
10%対象 合計300,000円
消費税(10%)30,000円
請求額(税込)330,000円
源泉所得税▲30,630円
差引ご請求額299,370円
振込先〇〇銀行 〇〇支店 普通 口座番号
支払期限10月31日

消費税の端数処理

また、消費税額の端数処理は、1枚の請求書につき税率ごとに1回が原則です。

そのため、明細の行ごとに消費税を計算して切り捨て、それを合計する作り方は認められていません。(参考:国税庁「インボイス制度の理解のために」)自作のExcelテンプレートでは、計算式を確認しておきましょう。

一方、免税事業者で登録していない場合は登録番号を書けないため、「消費税」の表示方法について取引先と事前にすり合わせておくと混乱を防げます。

源泉徴収がある報酬の計算例

デザイン料・原稿料・講演料など、個人への一定の報酬は支払側が所得税及び復興特別所得税を源泉徴収します。

具体的には、税率は同一人への1回の支払額が100万円以下の部分で10.21%、100万円を超える部分は20.42%です。なお、請求書で報酬額と消費税額を明確に区分していれば、税抜の報酬額を基準に計算できます。(参考:国税庁「No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき」)

例えば、税抜300,000円のデザイン料を請求する場合は次のとおりです。

  1. 消費税300,000円 × 10% = 30,000円
  2. 請求額(税込)300,000円 + 30,000円 = 330,000円
  3. 源泉所得税300,000円 × 10.21% = 30,630円
  4. 差引振込額330,000円 - 30,630円 = 299,370円

100万円を超える場合は2段階

一方、1回の報酬が100万円を超える場合は2段階で計算します。

仮に税抜1,500,000円なら、100万円までの部分が1,000,000円 × 10.21% = 102,100円、超える部分が500,000円 × 20.42% = 102,100円で、源泉所得税は合計204,200円です。

全額に20.42%を掛けてしまう間違いが起きやすいので、高額案件では特に検算してください。

さらに、請求書に「源泉所得税 ▲30,630円」「差引ご請求額 299,370円」まで書いておくと、先方が計算し直す手間がなくなります。

振込額から逆に報酬額を確認したいときは源泉所得税 逆算ツールを使うと、100万円超の区分も含めて計算できます。

発行側(個人事業主)の仕訳例

続いて、税込経理の場合の例です。源泉徴収された所得税は、確定申告で精算する前払いの税金です。

このため、個人事業主は「事業主貸」で処理するのが一般的です。

9/30 請求時
借方金額貸方金額
売掛金299,370売上高330,000
事業主貸30,630
10/31 入金時
借方金額貸方金額
普通預金299,370売掛金299,370

なお、源泉徴収された税額は、取引先から支払調書が届かなくても自分の請求書控えから集計できます。

そこで、確定申告の時期に慌てないよう、請求書の一覧に「源泉税額」の列を設けておくのがおすすめです。

番号・ファイル名・保存のルールを先に決める

無料テンプレートでも有料ツールでも、最初にルールを決めておけば後から探す手間がほぼなくなります。具体的には、次の形がシンプルで運用しやすいでしょう。

対象ルール例
請求書番号「年-月-連番」。再発行時は新しい番号を振り、備考に「2026-09-003の差替え」と書く2026-09-003
ファイル名「発行日_取引先_金額_番号.pdf」20260930_〇〇社_330000_2026-09-003.pdf
保存発行した請求書の控え(適格請求書の写し)は保存義務があるため、年ごとのフォルダにPDFで保管-

送る前の3つのチェック

また、ひな形を作ったら、送る前に毎回見るチェック項目を3つだけ決めておくと漏れが減ります。特におすすめは次の3点です。

  • 「宛名と金額が発注書と一致しているか」
  • 「登録番号と税率ごとの消費税額があるか」
  • 「支払期限と振込先が今回の取引条件どおりか」

前月の請求書をコピーして作る運用では、取引年月日や件名が前月のまま残る事故が特に多いため、コピー直後に日付欄を空欄にするルールにしておくと安全です。

もっとも、表計算ソフトのテンプレートは件数が少ないうちは十分ですが、月10件を超えるあたりから番号の重複や転記ミスが起きやすくなります。

この件数を、採番の自動化、取引先マスタ、PDF出力、会計ソフトへの売上連携ができるツールに移る目安にしてください。

候補の比較は会計ソフトの比較、見積書・納品書との関係は見積書・納品書・請求書の違いで整理しています。

よくある差し戻しと防ぎ方

登録番号の記載漏れ・桁違い

テンプレートの固定欄に入れ、国税庁の公表サイトで一度照合しておく

税込・税抜の混在

単価欄は税抜で統一し、消費税は合計欄で一括計算

宛名が発注書と違う

発注書・契約書の正式名称(部署名含む)をマスタに登録

締め日と取引月のずれ

取引開始時に「締め日・支払日・請求書の到着期限」を文書で確認

振込手数料の差引き

負担者を見積段階で明記。差し引かれた場合の処理方法を事前に決めておく。なお、取適法(旧下請法)の対象取引では発注側が代金から差し引くことは禁止。フリーランス法の対象取引でも減額に当たる場合があるため、公正取引委員会の案内で確認する

送付と入金確認・催促の手順

  1. 締め日の翌営業日までPDFで送付。件名は「【請求書】2026年9月分 〇〇(屋号)」のように月と送り主が分かる形に
  2. 送付後送付した日付を請求一覧に記録し、支払期限の列でソートできるようにする
  3. 支払期限の翌営業日通帳・ネットバンキングで入金を確認し、消し込む
  4. 未入金ならまず「行き違いの確認」として連絡(例:「9月30日付請求書(No.2026-09-003)のご入金がまだ確認できておりません。お手数ですがご確認いただけますでしょうか」)
  5. 1週間回答がなければ電話で担当者に確認し、支払予定日を聞き取って記録する

実務では、未入金の多くは先方の処理漏れや請求書の未着が原因です。

最初の連絡を責める口調にしないこと、そして金額の大きい案件や新規取引では着手金・前受金を設定しておくことが、関係を保ちながら回収リスクを下げる現実的な方法です。

よくある質問

インボイス対応の請求書に必須の記載事項は何ですか?

発行者の氏名または名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの合計と適用税率、税率ごとの消費税額、宛先の名称が必須です。軽減税率の対象品目がある場合は、その表示も必要です。

フリーランスの報酬にかかる源泉徴収税額の計算方法は?

同一人への1回の支払額が100万円以下の部分は10.21%、100万円を超える部分は20.42%で計算します。請求書で報酬額と消費税額を明確に区分していれば、税抜の報酬額を基準にできます。例えば税抜300,000円なら源泉所得税は30,630円で、差引振込額は299,370円です。

請求書の支払期限を過ぎても入金がないときはどうすればいいですか?

まず「行き違いの確認」として、請求書の日付と番号を示して入金を確認してもらうよう連絡します。1週間回答がなければ、電話で担当者に確認し、支払予定日を聞き取って記録します。未入金の多くは先方の処理漏れや請求書の未着が原因なので、最初の連絡は責める口調にしないことが大切です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務等の個別の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。