この記事のポイント
- 税法と会社法で保存期間の数え始めが違うため、実務では「申告期限の翌日から10年」で統一(3月決算なら10年後の5月末まで)すると管理が楽
- 経理データは3-2-1(3つ持ち、2種類以上の媒体、1つは離れた場所)で守る
- 年1回の復元テストで、バックアップから本当に戻せるかを確かめる
会計ソフトのデータは、パソコンの故障、誤操作による削除、クラウドサービスの解約、担当者の退職など、思わぬきっかけで見られなくなります。
一方で帳簿書類には法律で定められた保存期間があり、「消えてしまった」では済みません。
この記事では、まず何年残す必要があるかを整理し、そのうえで経理データを失わないためのバックアップの運用を、表とチェックリストの形でまとめます。
紙の書類をスキャンする手順は紙書類のデジタル化、会計ソフトの乗り換え作業そのものは会計ソフトの比較で扱っています。
帳簿書類の保存期間の一覧
2026年9月時点の主な保存期間は次のとおりです。税法と会社法では期間の数え始めが違う点に注意してください。
| 対象 | 保存期間 | 起算点 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 法人の帳簿(仕訳帳・総勘定元帳など)と書類(決算書類、請求書・領収書など) | 原則7年 | 確定申告書の提出期限の翌日 | 法人税法 |
| 上記のうち、欠損金が生じた事業年度の帳簿書類 | 10年 | 同上 | 法人税法 |
| 会社の会計帳簿と事業に関する重要な資料 | 10年 | 帳簿の閉鎖の時 | 会社法 |
| 会社の計算書類(貸借対照表・損益計算書など)と附属明細書 | 10年 | 作成した時 | 会社法 |
| 個人事業者(青色申告)の帳簿、決算関係書類、現金・預金取引等の書類 | 原則7年(一定の場合は一部5年) | 確定申告書の提出期限の翌日 | 所得税法 |
| 個人事業者の上記以外の書類(見積書・納品書など)、白色申告者の書類 | 原則5年 | 同上 | 所得税法 |
メールやWebで受け取った請求書などの電子取引データも、紙の書類と同じ期間の保存が必要です。(参考:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」)
なお、給与や労務関係の書類は労働基準法など別の法律で期間が定められているため、ここでは対象外としています。
また、個人事業者の区分は所得の水準や申告の種類で細かく分かれるので、自分がどれに当たるかは国税庁のホームページで確認してください。(参考:国税庁「No.2070 青色申告制度」)
いつまで残すかを計算してみる
3月決算の法人で、2027年3月期(2026年4月1日〜2027年3月31日)の場合を考えます。申告期限の延長を受けていなければ、確定申告書の提出期限は2027年5月31日です。
税法上の保存期間はその翌日の2027年6月1日から数えて7年、つまり2034年5月31日までです。この期に欠損金が生じていれば10年となり、2037年5月31日まで延びます。(参考:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」)
一方、会社法の会計帳簿は、期末の2027年3月31日に帳簿を閉鎖したとすると、そこから10年です。
- 2027年3月31日期末。会社法の会計帳簿は、帳簿を閉鎖したとすると、そこから10年
- 2027年5月31日確定申告書の提出期限(申告期限の延長を受けていない場合)
- 2027年6月1日税法上の保存期間の数え始め(提出期限の翌日)
- 2034年5月31日税法上の保存期間(7年)の終わり
- 2037年5月31日欠損金が生じていれば10年となり、ここまで延びる
「申告期限の翌日から10年」で統一する
実務では、長いほうの期間に合わせて「申告期限の翌日から10年(3月決算なら10年後の5月末)」で統一しておくと、年度ごとに期限を管理する手間が省けます。
期末から10年と数えると、欠損金が生じた年度の税法上の期限(上の例では2037年5月31日)より約2か月早く終わってしまうため、起算点は申告期限の翌日にそろえます。
会計ソフトの種類別に見るバックアップの考え方
| 観点 | クラウド型 | インストール型 |
|---|---|---|
| 置き場所 | 提供会社のサーバー | 自社のパソコンや社内サーバー |
| 主なリスク | 解約・契約切れで閲覧できなくなる、誤削除した仕訳を自分で戻せない | パソコンの故障・盗難、ランサムウェア、保存先の上書き |
| バックアップの考え方 | 帳簿と証憑を定期的に書き出し、自社の保存先に置く | ソフトのバックアップ機能でファイルを作り、別の媒体にも複製する |
確かにクラウド型は提供会社側でもデータを守っています。しかし、それは「サービスを契約している間、サービスの中で見られる」ことの保証です。
契約終了後の保存まで自社の代わりに引き受けてくれるわけではありません。
他方、インストール型は古いバージョンで作ったバックアップを新しいバージョンで開けるかどうかが製品によって異なります。そのため、バージョンアップの前に一度書き出しておくと安心です。
3-2-1の考え方を経理データに当てはめる
バックアップの基本として知られる3-2-1は、「データを3つ持ち、2種類以上の媒体に置き、1つは離れた場所に置く」という考え方です。
経理データに当てはめた運用表の例は次のとおりです。
| コピー | 置き場所 | 頻度 | 担当 | 中身 |
|---|---|---|---|---|
| 1(本体) | 会計ソフト(クラウドまたは社内PC) | 毎日 | 経理担当 | 日々の仕訳と添付した証憑 |
| 2(社内) | 社内の共有フォルダやNAS | 毎月の締め後 | 経理担当 | 月次締め後の仕訳帳・試算表のCSVとPDF、インストール型ならバックアップファイル |
| 3(社外) | 別のクラウドストレージ、または金庫などで保管する外付けの記録媒体 | 年1回+月次の分を四半期ごと | 経理責任者 | 年次決算後の一式(次の見出しの項目) |
同期だけではバックアップにならない
注意したいのは、パソコンのフォルダをクラウドと自動で同期しているだけの状態です。同期は削除や暗号化の被害もそのまま反映します。つまり、それだけではバックアップになりません。
そこで、社外のコピーは、書き込んだら上書きしない保存先にするか、過去の版を戻せる設定を確認しておきます。
年次締め後に書き出す項目リスト
決算が確定し申告が終わったら、次の項目を1つのフォルダ(例:「2027年3月期_決算一式」)にまとめます。
特に、CSVは再利用のため、PDFは見た目のまま残すためと、両方で残すのが確実です。
| 項目 | 形式 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 仕訳帳・総勘定元帳 | CSV・PDF | 決算整理仕訳を含む全期間分か |
| 補助元帳(取引先別・口座別) | CSV | 売掛金・買掛金の期末残高が内訳と一致するか |
| 月次推移の試算表 | PDF・Excel | 12か月分そろっているか |
| 決算書一式と勘定科目内訳明細書 | 申告した最終版か | |
| 固定資産台帳 | CSV・PDF | 期末帳簿価額が貸借対照表と一致するか |
| 消費税の集計表 | 税区分別の集計が申告書と一致するか | |
| 申告書の控えと電子申告の受信通知 | 提出日が分かるか | |
| 勘定科目・取引先・税区分の設定一覧 | CSV | 翌期以降に同じ設定を再現できるか |
| 添付した証憑ファイル | 元のファイル形式 | 取引年月日・金額・取引先で探せる名前になっているか |
ソフト乗り換え・解約時のデータ保全チェックリスト
| 確認項目 | 済 |
|---|---|
| 保存期間内のすべての事業年度について、上の項目リストの書き出しが済んでいる | □ |
| ソフト内にしか保存していない証憑ファイルがないか、一括ダウンロードで取り出した件数とソフト上の件数を比べた | □ |
| 解約後に閲覧できる期間や、閲覧専用の契約があるかを提供会社の案内で確認した | □ |
| インストール型の場合、旧ソフトを動かせるパソコンを残すか、PDFで読める形にしたかを決めた | □ |
| 税務調査で過去の帳簿を求められたときに、誰がどのフォルダから出すかを文書にした | □ |
復元テストの手順
バックアップは、戻せることを確かめて初めて意味を持ちます。
そこで年1回、決算一式を保存した直後に次の手順で試します。
- 別のパソコンに取り出す社外のコピーから、ランダムに選んだ1か月分のフォルダを別のパソコンに取り出す
- CSVの崩れを見る仕訳帳のCSVをExcelで開き、文字化けや桁落ち(先頭の0が消える、金額が指数表示になる)がないかを見る
- 試算表と突き合わせる仕訳帳のCSVからその月の預金の入出金を集計して前月末残高に加減し、再計算した月末残高が、保存してある試算表PDFの月末残高と一致するかを確かめる
- バックアップを読み込むインストール型は、テスト用の環境でバックアップファイルを読み込み、試算表が表示されるかを確認する
- 証憑を検索する証憑を3件選び、ファイル名の日付・金額で検索して見つかるかを試す
- 結果を記録する実施日・担当者・結果を記録し、問題があれば保存方法を直す
手順3の集計にはSUMIFSが使えます。具体的な書き方は経理のExcel術を参考にしてください。
よくある失敗と防ぎ方
バックアップを担当者個人のPCやUSBメモリだけに置く
退職や紛失で所在が分からなくなる
保存先を会社管理の場所に限定し、一覧表に記録する
決算前の仮の数字で書き出して、そのまま保存する
申告した数字と保存データが食い違う
書き出しは申告後に行い、フォルダ名に「確定」と付ける
保存期間を過ぎたかどうか分からず、何年分も削除できない
保存先の容量が圧迫される
フォルダ名に事業年度と「廃棄可能年月」を入れておく
電子で受け取った請求書を印刷して元データを消す
電子取引データの保存ルールを満たさない
データを正本とし、印刷は必要な時だけにする
書き出しとバックアップの確認を年次の作業として定着させるには、月次決算チェックリストに月次分の書き出しを1行加えておき、年度末にまとめて社外へ移す流れにすると無理なく続きます。
加えて、電子取引データの保存全体についてはペーパーレス経理5ステップも参照してください。
よくある質問
経理データ(帳簿書類)は何年保存が必要?
法人の帳簿書類は税法上、確定申告書の提出期限の翌日から原則7年(欠損金が生じた事業年度は10年)、会社法では会計帳簿などを帳簿の閉鎖の時から10年の保存が必要です。数え始めが違うため、実務では「申告期限の翌日から10年」で統一すると管理が楽です。
経理データのバックアップの3-2-1とは?
「データを3つ持ち、2種類以上の媒体に置き、1つは離れた場所に置く」という考え方です。経理データなら、会計ソフト本体のほか、社内の共有フォルダやNASと、別のクラウドストレージなど社外の保存先にもコピーを置きます。なお、クラウドと同期しているだけでは削除や暗号化の被害もそのまま反映されるため、バックアップになりません。
会計ソフトを解約・乗り換えるとき経理データはどう残す?
保存期間内のすべての事業年度について、仕訳帳・総勘定元帳や決算書一式、証憑ファイルなどを書き出してから解約します。クラウド型は、契約終了後の保存まで提供会社が引き受けてくれるわけではないためです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務等の個別の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。
