この記事のポイント
- デジタル化の成否は、取り込む時点の設定と名前の付け方でほぼ決まる
- ファイル名は「日付_取引先_種類_金額」、フォルダは「年度→書類の種類→月」の3階層まで
- 紙を処分する前提なら、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を満たす必要がある
紙の書類をスキャンしても、ファイル名が「scan0001.pdf」のまま並んでいては、紙のファイル棚を探すのと手間は変わりません。
つまり、デジタル化の成否は、取り込む時点の設定と名前の付け方でほぼ決まります。
この記事では、紙の請求書・領収書・名刺を取り込む作業に絞り、そのまま社内ルールに転記できる形で設定値や命名例を紹介します。
なお、経理全体をペーパーレスに移す順番は「ペーパーレス経理5ステップ」で整理しているので、先に全体像を決めてから本記事のルールを当てはめるとスムーズです。
書類別のスキャン設定の目安
解像度を上げれば読みやすくなりますが、ファイルサイズも大きくなります。
特に、税務関係の書類を後述の「スキャナ保存」で紙の代わりにする予定なら、最低ラインは電子帳簿保存法の要件(200dpi以上、原則カラー)に合わせておくのが安全です。
| 書類 | カラー設定 | 解像度 | 保存形式 |
|---|---|---|---|
| 請求書・領収書・ 契約書・納品書 (重要書類) | カラー(256階調以上) | 200〜300dpi | PDF(OCR付き) |
| 見積書・注文書 などの一般書類 | グレースケール以上 | 200dpi以上 | PDF(OCR付き) |
| 名刺 | カラー | 300dpi程度 | 名刺管理サービスまたはJPEG |
| 社内の参考資料・配布物 | 白黒で可 | 200dpi程度 |
また、感熱紙のレシートは時間がたつと文字が薄くなるため、受け取った当日に取り込むのが基本です。
スマートフォンで撮影するときには、影が入らないよう真上から撮り、四隅が写っているかを確認します。
ファイル名は「日付_取引先_種類_金額」で統一する
ファイル名に取引年月日・取引先・金額を入れておくと、フォルダ内で並べ替えるだけで探せるうえ、電子帳簿保存法で求められる検索項目(取引年月日・取引金額・取引先)とも一致します。
たとえば社内ルールにするなら、次のような形です。
| 書類 | ファイル名の例 |
|---|---|
| 受け取った請求書 | 20260915_株式会社サンプル商事_請求書_110000.pdf |
| 経費の領収書 | 20260918_サンプル文具店_領収書_3300.pdf |
| 契約書 | 20260901_株式会社サンプル_業務委託契約書_0.pdf |
- 日付は西暦8桁(YYYYMMDD)にする。和暦や「9月15日」表記では並べ替えが崩れる
- 金額は税込・カンマなしの半角数字にする。また、金額のない書類は「0」とする
- 「株式会社」の位置は書類の表記どおりにし、略称(㈱など)を混ぜない
- 区切りは半角アンダースコアに統一し、スペースは使わない
フォルダ構成は3階層までにする
階層を深くすると保存場所を迷い、探すときにも何度もクリックが必要になります。
「年度→書類の種類→月」の3階層を上限にすると、担当者が変わっても迷いません。
02_領収書
03_契約書
04_発行請求書
別枠「00_受付」を置く
別枠:00_受付(未処理の置き場。月末に空にする)
フォルダの新規作成は経理担当だけが行い、他の社員は「00_受付」に入れるだけにすると、似た名前のフォルダが乱立するのを防げます。
さらに、書類の種類に番号を振っておくと、一覧での並び順も毎回同じになります。
毎日の取り込み手順(15分で終わる流れ)
- 書類を分けるまず、受付トレーの書類を取り出し、「請求書・領収書・契約書・納品書」と「それ以外」に分ける
- 読み取って「00_受付」へ1書類ずつ上の表の設定で読み取り、いったん「00_受付」に保存する
- 読めるかを確認画面で拡大し、日付・金額・取引先・但し書きが読めるかを確認する。かすれていれば設定を上げて読み直す
- 名前を変えて移動ファイル名を規則どおりに変更し、種類と月のフォルダへ移動する
- 紙に「済」と書いて封筒へ最後に、処理済みの紙の右上に「済」と日付を書き、月別の原本保管封筒に入れる
手順5の封筒は、紙を捨てるかどうかを決める前の一時保管場所です。そのため、書類ごとの扱いは次の表を目安に社内で決めておきます。
| 書類 | 紙原本の扱いの考え方 |
|---|---|
| 契約書・覚書 | 紛争時の証拠になるため、原本も保管する会社が多い |
| 請求書・領収書 | スキャナ保存の要件を満たす運用なら税法上は処分も可能。満たせない場合は紙を保存 |
| 名刺 | データ化と読み取り確認が済めば、シュレッダーで処分する運用が一般的 |
紙・データのどちらで保存する場合も、法人の帳簿書類の保存期間は原則7年(欠損金が生じた事業年度は10年)です。(参考:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」)
したがって、年度フォルダを削除する時期も、この期間を基準に決めておきます。
OCRと名刺データの扱い
OCR(文字認識)付きのPDFにしておくと、ファイル名に入れていない品名や担当者名でも全文検索できます。
金額と日付はファイル名が正
ただし、手書き文字や薄い印字は誤認識が起きやすいため、金額や日付はOCR結果を信用せず、ファイル名を正として扱うのが安全です。
また、名刺は名刺管理サービスやスキャナーの付属ソフトで会社名・氏名・連絡先をデータ化できます。
ただ、名刺の情報は個人情報にあたるため、閲覧できる人の範囲を決め、退職者のアカウントを速やかに止める運用もあわせて決めておきましょう。
電子帳簿保存法の「スキャナ保存」で押さえる主な要件
紙で受け取った請求書や領収書をスキャンし、紙の原本の代わりにデータを保存するのが「スキャナ保存」です。
利用は任意ですが、紙を処分する前提なら要件を満たす必要があります。2026年9月時点の主な要件は次のとおりです(細部は国税庁の一問一答で確認してください)。(参考:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】Ⅱ 適用要件【基本的事項】」)
- 解像度200dpi以上、赤・緑・青それぞれ256階調以上のカラーで読み取る(見積書・注文書など資金の流れに直結しない一般書類はグレースケール可)
- 受領後、速やか(おおむね7営業日以内)に入力する。事務処理規程を定めれば、業務の処理サイクル(最長2か月)経過後、速やかに入力する方法も可
- 入力期間内にタイムスタンプを付けるか、訂正・削除の履歴が残るシステムで入力期間内の保存を確認できるようにする
- 取引年月日・取引金額・取引先で検索できるようにし、ディスプレイやプリンタで明瞭に確認できる環境を備える
- 契約書・請求書・領収書などの重要書類は、会計ソフトの仕訳とスキャンデータの対応関係が分かるようにする(伝票番号を控えるなど)
注意
なお、メールやWebで最初からデータで受け取った書類は「スキャナ保存」ではなく「電子取引」の扱いで、データのまま保存する必要があります。
ただし、紙の原本は、税法上の要件を満たしていても、他の法令や取引先との約束で原本保管が必要な場合があるため、処分前に確認してください。
よくある間違いと防ぎ方
月末にまとめてスキャンし、入力期間を過ぎてしまう
受付トレーを毎日空にする担当と時刻を決める
複数の領収書を1枚にまとめて撮影する
1書類1ファイルを原則にする
スキャン後に画像を加工・トリミングし直す
加工が必要なら取り込み直し、元データは残す
ファイル名の取引先が「サンプル商事」と「㈱サンプル商事」で混在
よく使う取引先の正式表記を一覧にして共有する
共有フォルダを誰でも削除できる設定のまま運用
削除権限は経理責任者だけに絞り、ごみ箱の保持期間も確認する
ファイル名の一覧を月次でExcelに書き出して金額を集計すると、会計ソフトの残高との突き合わせにも使えます。
関数の使い方は「経理のExcel術」を参考にしてください。
よくある質問
領収書や請求書をスキャンするときの解像度と色の設定は?
紙の代わりにスキャナ保存する予定なら、電子帳簿保存法の要件に合わせて200dpi以上、赤・緑・青それぞれ256階調以上のカラーで読み取るのが安全です。見積書・注文書など資金の流れに直結しない一般書類は、グレースケールでも構いません。
スキャンした書類のファイル名はどう付ければいいですか?
「日付_取引先_種類_金額」で統一するのがおすすめです。日付は西暦8桁、金額は税込・カンマなしの半角数字にし、区切りは半角アンダースコアにそろえます。取引年月日・取引先・金額を入れておけば、電子帳簿保存法で求められる検索項目とも一致します。
スキャナ保存すれば紙の原本は捨ててもいいですか?
請求書・領収書は、スキャナ保存の要件を満たす運用なら税法上は処分も可能で、満たせない場合は紙を保存します。ただし、他の法令や取引先との約束で原本保管が必要な場合があるため、処分前に確認してください。なお、メールやWebで最初からデータで受け取った書類は「電子取引」の扱いで、データのまま保存する必要があります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務等の個別の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。
