経理担当者のためのExcel時短術:そのまま使える関数の式とショートカット

経理担当者のためのExcel時短術:そのまま使える関数の式とショートカット

この記事のポイント

  • 源泉所得税はROUNDDOWNとIF、取引先名はXLOOKUP、支払期日はEOMONTHで自動計算する
  • SUMIFSの式を右と下にコピーするだけで、科目×月の集計表になる
  • 表記揺れは入力規則のプルダウンで防ぎ、日付の文字列化や二重入力もチェックする

関数の名前を知っていても、経理の実務でどう組み合わせるかが分からないと時短にはつながりません。

この記事では、支払一覧・経費集計・取引先照合という経理で毎月出てくる表を題材に、そのままコピーして使える式をセルの値つきで紹介します。

なお、式はMicrosoft 365を前提にしています。XLOOKUPはExcel 2021以降で使える関数なので、古い版ではVLOOKUPでの書き方も併記しました。

題材にする支払一覧のレイアウト

ここでは、外部の専門家やフリーランスへの報酬を支払う一覧表を例にします。1行目が見出し、2行目以降に1取引1行でデータを入れます。

列内容2行目の例
A請求日2026/9/15
B取引先コードT003
C取引先名(式)山田デザイン事務所
D報酬(税抜)50,000
E消費税(式)5,000
F源泉所得税(式)5,105
G振込額(式)49,895
H支払期日(式)2026/10/31

源泉所得税はROUNDDOWNとIFで1本の式に

個人に支払う原稿料やデザイン料などの報酬には、源泉所得税(復興特別所得税を含む)がかかります。

具体的には、1回の支払額が100万円以下の部分に10.21%、100万円を超える部分に20.42%で、1円未満は切り捨てます。(参考:国税庁「No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき」)

また、請求書で報酬と消費税が明確に区分されていれば、税抜の報酬額を基に計算できます。つまり、F2に入れる式は次のとおりです。

=IF(D2<=1000000, ROUNDDOWN(D2*0.1021,0), ROUNDDOWN((D2-1000000)*0.2042,0)+102100)

  • D2が50,000の場合:50,000×10.21%=5,105円
  • D2が1,500,000の場合:(1,500,000−1,000,000)×20.42%+102,100=204,200円

102,100は100万円×10.21%の固定額です。

源泉対象かどうかの列を足す

なお、源泉徴収の対象になるのは所得税法で定められた種類の報酬に限られ、法人への支払いは原則として対象外です。(参考:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」)

そこで、一覧に源泉対象かどうかの列を足し、対象外の行はF列を0にしておくと誤りを防げます。

消費税はE2に次の式を入れます。

=ROUNDDOWN(D2*0.1,0)

振込額はG2に次の式を入れます。

=D2+E2-F2

こうすれば、50,000+5,000−5,105=49,895円が求まります。

さらに、振込額から報酬額を逆算したいときは源泉所得税の逆算ツールを使うと、式を組むより早く確認できます。

取引先名はXLOOKUPでマスタから引く

取引先名を毎回手入力すると、「株式会社」の有無や全角・半角の揺れで後の集計が崩れます。

このため、別シート「取引先」のA列にコード、B列に名称を置き、C2には次の式を入れます。

=XLOOKUP(B2, 取引先!A:A, 取引先!B:B, “未登録”)

4つ目の引数では、見つからなかったときの表示を指定します。「未登録」と出れば、マスタへの追加漏れにすぐ気づけます。

一方、VLOOKUPで書く場合は次のとおりです。

=IFERROR(VLOOKUP(B2, 取引先!A:B, 2, FALSE), “未登録”)

FALSEを省略しない

最後のFALSEを省略すると近似一致になり、別の取引先名が表示されることがあるので注意してください。

支払期日はEOMONTHで自動計算

EOMONTHは「基準日からnか月後の月末日」を返す関数です。

具体的には、支払条件ごとの書き方は次のとおりです。また、セルの表示形式は日付にしておきます。

支払条件H2の式A2が2026/9/15のとき
月末締め翌月末払い=EOMONTH(A2,1)2026/10/31
月末締め翌々月10日払い=EOMONTH(A2,1)+102026/11/10
当月末=EOMONTH(A2,0)2026/9/30

期日が土日祝日に当たる場合の前倒し・後ろ倒しは、WORKDAY関数と祝日一覧の表を組み合わせる方法があります。

ただ、取引先ごとに条件が違うことも多いので、最終確認は目視で行うのが安全です。

SUMIFSで科目別・月別の集計表を作る

例えば、会計ソフトから仕訳をCSVで書き出し、A列に日付、C列に勘定科目、E列に金額が入っているとします。

次に、集計表側でJ1に「2026/9/1」、I2に「外注費」と入力し、J2に次の式を入れます。

=SUMIFS($E:$E, $C:$C, $I2, $A:$A, “>=”&J$1, $A:$A, “<=”&EOMONTH(J$1,0))

「9月1日以上、9月末日以下」で外注費を合計する式です。さらに、$の付け方を工夫してあるので、右と下にコピーするだけで科目×月の一覧表になります。

見出しの月をきれいに見せたいときは、J1の表示形式を変えるか、別セルで次の式とすると「2026年9月」と表示されます。

=TEXT(J1,”yyyy年m月”)

金額を文字列として報告文に差し込むなら、次の式が便利です。

=TEXT(J2,”#,##0″)&”円”

月次の増減確認に使う場合は月次決算チェックリストと組み合わせてください。

入力規則で科目の表記揺れを防ぐ手順

1字違いは別の科目

SUMIFSは文字が1字でも違うと合計に含まれません。

たとえば「外注費」と「外注費 」(末尾に空白)も別物になるため、科目はプルダウンから選ぶ形にしておきます。

  1. 科目の一覧を作るまず、別シート「科目」のA列に、使う勘定科目を1行1つずつ入力する
  2. 入力規則を開く入力用シートの科目列を選択し、データタブの「データの入力規則」を開く
  3. リストの範囲を指定「入力値の種類」でリストを選び、元の値に科目一覧の範囲を指定する(書き方は下記)
  4. リスト以外を停止最後に、「エラーメッセージ」タブで、リスト以外の入力を停止する設定にしてOKを押す

リストの範囲(元の値)は、例えば次のように指定します。

=科目!$A$2:$A$30

すでに揺れが混じっている既存データは、次の式で前後の空白を除いた列を作ってから集計すると整います。

=TRIM(C2)

よくある間違いと防ぎ方

日付が文字列になっている

CSVの日付が左寄せなら文字列の可能性があります。その場合、SUMIFSの日付条件に一致せず、合計が0になります。

データタブの「区切り位置」で日付に変換してから集計します。

ROUNDとROUNDDOWNの取り違え

ROUNDでは四捨五入になり、1円ずれることがあります。

源泉所得税は切り捨てです。

二重入力

空いているI列にCOUNTIFSの式(下記)を置くと、同じ日・同じ取引先・同じ金額の行がTRUEになり、重複に気づけます。

二重入力のチェックは、支払一覧で空いているI列のI2に次の式を入れ、下の行へコピーします。

=COUNTIFS(B:B,B2,D:D,D2,A:A,A2)>1

毎日使うショートカット

キー動作経理での使いどころ
Ctrl+Shift+↓データの末尾まで選択CSVの金額列を一気に選ぶ
Ctrl+;今日の日付を入力処理日・確認日の記録
Ctrl+D上のセルをコピー式を下の行へ複写
F4参照の固定を切り替えSUMIFSの$を付ける
Ctrl+Shift+Lフィルターのオン・オフ取引先や科目で絞り込む
Ctrl+Tテーブルに変換行を追加しても式が自動で伸びる

もっとも、定型の税額計算を何度も式で組むより、専用のWebツールに任せたほうが早い場面もあります。

無料で使えるものは経理の無料Webツール活用ガイドにまとめています。

よくある質問

源泉所得税をExcelで計算するにはどうすればいいですか?

IF関数で支払額が100万円以下かどうかを分け、100万円以下の部分は10.21%、超える部分は20.42%を掛けて、ROUNDDOWNで1円未満を切り捨てる式を1本で組みます。請求書で報酬と消費税が明確に区分されていれば、税抜の報酬額を基に計算できます。

Excelで支払期日を自動計算する方法は?

「基準日からnか月後の月末日」を返すEOMONTH関数を使います。月末締め翌月末払いなら「=EOMONTH(A2,1)」、月末締め翌々月10日払いなら「=EOMONTH(A2,1)+10」とし、セルの表示形式は日付にしておきます。

SUMIFSの合計が合わない・0になるのはなぜですか?

SUMIFSは文字が1字でも違うと合計に含まれないため、科目の表記揺れや末尾の空白が原因になります。また、CSVの日付が文字列になっているとSUMIFSの日付条件に一致せず、合計が0になります。科目は入力規則のプルダウンから選ぶ形にし、日付はデータタブの「区切り位置」で変換してから集計します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務等の個別の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。