バックオフィス業務のアウトソーシング(外注)を検討する判断基準と費用の比べ方

バックオフィス業務のアウトソーシング(外注)を検討する判断基準と費用の比べ方

この記事のポイント

  • 外注に向くのは手順が決まっていて、判断の余地が小さく、量が安定している業務
  • 外注費は見積書だけでなく、外注後も残る社内作業を含めた社内の総コストと比べる
  • 見積もり依頼書・契約・引き継ぎチェックリストで、前提と責任の範囲をそろえておく

経理や給与計算を外注するかどうかは、「人が足りないから」という理由だけで決めると失敗しやすい判断です。

外注したのに社内の確認作業が減らない、委託先とのやりとりが増えて結局遅くなる、というのは現場でよく聞く話です。

この記事では、業務ごとの向き不向き、社内コストとの比べ方、引き継ぎの準備を、表と試算例で具体的に整理します。

業務ごとの向き不向き

外注に向くのは、手順が決まっていて、判断の余地が小さく、量が安定している業務です。

反対に、社内の事情を知らないと判断できない業務は残したほうが無難です。

業務外注との相性社内に残すべき部分
記帳(仕訳入力)高い用途が分からない支出の説明、科目ルールの決定
給与計算高い勤怠の締め、昇給・手当の決定
請求書の発行・発送中請求金額の確定、値引きや支払条件の判断
振込・支払処理低い支払の承認と実行は社内で行うのが基本
資金繰り表・予算管理低い経営判断に直結するため社内が主体

委託先の資格を確認する

もう一つ確認したいのが、委託先に業務を任せられる資格の問題です。

具体的には、税務書類の作成や税務相談は税理士、社会保険・労働保険の手続き書類の作成や提出代行は社会保険労務士の業務とされています。

そのため、記帳代行の会社に申告まで頼めるのか、給与計算の会社が入退社の手続きまで対応できるのかは、提携している専門家の有無も含めて事前に確認しましょう。

判断基準の比較表

項目外注に向く状態社内に向く状態
手順書手順が文書化されている担当者の頭の中にしかない
業務量毎月ほぼ一定、または繁忙期だけ増える月ごとの変動が大きく読めない
証憑の状態データ化されて共有できる紙で社内に散在している
判断の頻度例外処理が少ない取引ごとに判断が必要
スピード数日単位のやりとりで間に合う当日中の対応が頻繁に必要

「社内に向く状態」の欄に多く当てはまる場合でも、外注を諦める必要はありません。

その場合は、先に手順書づくりと証憑のデータ化を進めれば、外注できる状態に近づきます。

証憑のデータ化はペーパーレス経理の5ステップ、立替経費の流れは経費精算の仕組みづくりを参考にしてください。

社内コストと外注費の比べ方(試算例)

外注費の見積書だけを見ても、高いか安いかは判断できません。比べる相手は「社内で行った場合の総コスト」です。

なお、以下はすべて説明用に置いた仮の数字です。

  1. 担当者の時間単価を出す月給300,000円+会社負担の社会保険料等(仮に45,000円)=345,000円。所定労働時間160時間で割ると、1時間あたり約2,156円。
  2. 対象業務にかかる時間を測る記帳に月20時間かかっているとすると、2,156円×20時間=約43,100円。
  3. 外注後も残る社内作業を見積もる証憑の送付、質問への回答、結果の確認で月5時間とすると、約10,800円。
  4. 損益分岐を出す43,100円−10,800円=約32,300円。月額の外注費がこれを下回れば、金額面では外注が有利です。

「残る社内作業」を0時間にしない

特に見落としやすいのが3番目の「残る社内作業」です。これを0時間で計算すると外注が必ず得に見えてしまいます。

また、金額だけでなく、担当者の退職や休職で業務が止まるリスクを下げられるか、空いた20時間を何に使うかも合わせて評価します。

実際の外注費は委託先や業務量によって大きく変わります。そのため、同じ業務範囲を書いた依頼書で複数社から見積もりを取って比べてください。

繁忙期だけ外注する選択肢

通年の外注が割高になる場合は、繁忙期だけ依頼する形も検討できます。

例えば同じ試算例で、普段は月20時間の記帳が年に3か月だけ40時間に増え、その3か月は残業で対応しているとします。

残業には割増賃金がかかるため、増えた20時間分の社内コストは通常の時間単価より高くなります。

そこで、この3か月分だけを外注できれば、担当者の負担を平準化しつつ、年間の外注費を通年契約より抑えられる可能性があります。

ただし、スポット契約を受けていない委託先もあるため、繁忙期だけの依頼が可能かどうか、依頼の何か月前までに申し込む必要があるかを事前に確認しておきます。

見積もり依頼書に書く項目

委託先によって見積もりの前提がばらばらだと、金額を並べても比較になりません。

そこで、次の項目を1枚にまとめ、全社に同じものを送ります。

項目記入例
依頼したい業務記帳、月次試算表の作成(申告は含まない)
月間の取引量仕訳 約300件/月、うち銀行明細 約200件
使用している会計ソフトクラウド会計ソフト(ソフト名を記載)
証憑の渡し方スキャンデータを共有フォルダに格納
希望する納期翌月10営業日までに試算表
繁忙期3月・12月は取引量が約1.5倍

取引量は、会計ソフトで直近12か月の仕訳件数を月別に出せば把握できます。

件数に波がある会社は、繁忙期の料金の扱いも見積もりの段階で確認しておくと、契約後の追加請求で揉めません。

外注でよくある失敗と防ぎ方

試算表が毎月遅れる

社内から委託先への証憑送付が遅い

社内の提出期限を契約上の期限より前に設定する

質問のやりとりが月末に集中する

不明な取引を月末にまとめて聞いている

週1回、質問をまとめて回答する日を決める

社内に誰も分かる人がいなくなる

丸投げして結果を見ていない

試算表の増減を毎月社内で確認し、説明を受ける

解約したくてもデータが戻らない

返却条件を決めていない

契約書に返却形式と期限を明記する

契約前に書面で確認すること

  • 対応範囲と、範囲外の作業や仕訳件数の増加で追加費用が発生する条件
  • 資料の提出期限と成果物の納期(例:証憑は翌月3営業日までに送付、試算表は10営業日まで)
  • 再委託の有無。マイナンバーを扱う業務の再委託には、委託元の許諾が必要とされています(参考:個人情報保護委員会「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)に関するQ&A」)
  • 個人情報の管理体制。委託元にも委託先を監督する責任があるため、管理方法を確認して記録に残す
  • 解約時のデータの返却形式(会計ソフトのデータ、CSV、証憑ファイル)と期限

引き継ぎチェックリスト

項目渡すもの確認
勘定科目・補助科目のルール科目一覧と、迷いやすい支出の処理例□
取引先情報取引先一覧、締め日・支払日、源泉徴収の要否□
口座・カード明細の閲覧方法(閲覧専用の権限を推奨)□
月次の日程締め日、報告期限、社内の承認者□
前期の資料決算書、固定資産台帳、前期末の残高明細□
連絡ルール質問の窓口、回答期限、使用するツール□

口座は閲覧のみ

なかでも口座の権限は、委託先に振込の操作権限まで渡さず、閲覧のみにとどめるのが基本です。

移行は一度に全部ではなく、まず1〜2か月は社内と委託先の両方で処理して結果を突き合わせると、認識のずれを早く見つけられます。

まず1〜2か月社内と委託先の
両方で処理
突き合わせ結果を比べて
認識のずれを見つける
差が出た取引引き継ぎ資料の
処理例に書き足す

突き合わせで差が出た取引は、科目ルールの説明不足であることが多いので、その都度引き継ぎ資料の処理例に書き足していきます。

また、委託後も、月次の締めがどこまで終わったかを社内で確認できるよう、月次決算チェックリストを共通の物差しとして使うのがおすすめです。

よくある質問

バックオフィス業務で外注に向いているのはどんな業務?

手順が決まっていて、判断の余地が小さく、量が安定している業務です。記帳(仕訳入力)や給与計算は外注との相性が高く、振込・支払処理や資金繰り表・予算管理は社内が主体になります。

経理の外注費が高いか安いかはどう判断する?

社内で行った場合の総コストと比べて判断します。担当者の時間単価から対象業務にかかる社内コストを出し、外注後も残る社内作業の分を差し引いた額を月額の外注費が下回れば、金額面では外注が有利です。

経理を外注する前に契約書で確認することは?

対応範囲と追加費用が発生する条件、資料の提出期限と成果物の納期、再委託の有無、個人情報の管理体制、解約時のデータの返却形式と期限を書面で確認します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務等の個別の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。