経理の定型作業を自動化する:銀行明細の取込と自動仕訳ルールの作り方

経理の定型作業を自動化する:銀行明細の取込と自動仕訳ルールの作り方

この記事のポイント

  • 明細を「毎回同じ処理で済むもの」と「毎回判断が要るもの」に分け、判断が要る取引はルールにしない
  • ルールは会計ソフトに打ち込む前に設計表で作り、具体的な条件のルールほど上に置く
  • 月次の確認で見つかったずれを設計表に戻して、精度を上げていく

会計ソフトに銀行口座やカードをつなげば、明細は自動で入ってきます。

ところが、取り込んだ明細に付く勘定科目がばらばらだったり、同じ取引が月によって別の科目になったりして、結局すべてを目で直している会社は少なくありません。原因の多くは、自動仕訳のルールを「思いついた順に」登録していることです。

この記事では、どの作業を自動化するかの見極めから、ルールの設計表、誤判定の防ぎ方、月次の確認手順までを順に整理します。

なお、ソフトの選び方は会計ソフトの比較、ペーパーレス化全体の順番はペーパーレス経理5ステップで扱っているので、ここでは「ルールの作り方」に絞ります。

自動化に向く作業・向かない作業の判定表

最初に、明細を「毎回同じ処理で済むもの」と「毎回判断が要るもの」に分けます。

特に、判断が要る取引までルールにすると、誤った科目のまま大量に登録されてしまいます。

判定の観点自動化に向く自動化に向かない
相手先と内容相手先が決まれば内容も決まる(家賃、電話代、リース料)同じ相手先で内容が変わる(ネット通販、家電量販店)
金額毎月同額か、ほぼ一定金額によって資産計上か費用かが分かれる
税区分課税・非課税・不課税が固定している軽減税率と標準税率が混在する、相手先がインボイス登録事業者か確認が要る
頻度毎月・毎週発生する年に1〜2回しか発生しない
証憑との照合明細の金額だけで処理が完結する請求書と突き合わせて消込が必要(売掛金の入金など)

「向かない」取引は人が確認する

「向かない」側の取引は、ルールで科目を決め打ちせず、あえて未処理のまま残して人が確認する対象にします。

たとえば適格請求書発行事業者以外からの仕入れは、仕入税額控除の経過措置の割合が2026年9月30日までと10月1日以降で変わるため、明細の摘要だけでは正しい税区分を決められません。(参考:国税庁「インボイス制度に関するQ&A 問113 免税事業者等からの仕入れに係る経過措置」)

銀行・カード明細を取り込む手順

取込の方法は、会計ソフトと金融機関を直接つなぐ「連携」と、金融機関のサイトから明細をCSVで書き出して読み込む「CSV取込」の2つです。

また、連携できない口座がある場合も、手順を揃えておけば運用は同じにできます。

  1. 取込の方法を決める口座・カードの一覧を作り、それぞれ「連携」「CSV取込」のどちらで入れるかを決める
  2. 手入力の期間と重ねない取込開始日を決める。既に手入力した期間と重ならない日付にする
  3. CSVの列を対応付けるCSV取込の口座は、日付・摘要・出金・入金・残高の列を会計ソフトの項目に対応付け、設定を保存する
  4. 残高の一致を確認する初回の取込後、取込最終日の残高が通帳やWeb明細の残高と一致するかを確認する
  5. 摘要のパターンを書き出す1か月分の明細をルールなしで処理し、摘要の表記パターンを書き出す(これが次の設計表の材料になる)

手順5を飛ばさない

手順5を飛ばしていきなりルールを作ると、摘要の表記揺れに気づかず、ルールが当たらない明細が大量に残ります。

一方、口座の選び方の段階でCSVの形式を確認しておきたい場合は法人口座・ネット銀行選びも参考にしてください。

自動仕訳ルールの設計表

ルールは会計ソフトに直接打ち込む前に、表で設計します。

次は一般的な中小企業を想定した例です(摘要は銀行明細でよく見られる半角カナ表記を想定しています)。ただし、税区分は自社の取引内容に合わせて必ず確認してください。

No.摘要キーワード追加条件勘定科目補助科目税区分
1リソク入金受取利息口座名非課税売上
2テスウリヨウ出金・1,000円未満支払手数料振込手数料課税仕入10%
3(物件管理会社名)出金・毎月同額地代家賃事務所課税仕入10%
4(電話会社名)出金通信費固定電話・回線課税仕入10%
5(リース会社名)出金・毎月同額賃借料複合機課税仕入10%
6(電力会社名)出金水道光熱費電気課税仕入10%
7(新聞社名)出金・定期購読新聞図書費—課税仕入8%(軽減)
8(損害保険会社名)出金保険料火災保険非課税仕入
9ゼイムシヨ/ゼイキン出金(ルールなし)—要確認として残す
10(主要取引先名)入金売掛金取引先名対象外(消込)

「ルールを作らない」行も入れる

9行目のように、「ルールを作らない」ことを明記した行も入れておきます。税金の支払いは法人税・消費税・源泉所得税の預り分などで科目が変わるため、自動にすると誤りやすい代表例です。

同様に、10行目の売掛金も請求額と入金額が一致しない場合があります。そのため、消込の確認は人が行います。

ルールの優先順位と誤判定の例

複数のルールに当てはまる明細は、上位のルールが適用される作りが一般的です。そのため「具体的な条件のルールほど上に置く」のが原則です。

キーワードが短すぎたり、順番が逆だったりすると次のような誤判定が起きます。

電話会社の関連会社からのリース料

誤って当たったルール:通信費

社名の共通部分だけをキーワードにしていた。社名全体か口座名義まで含めて登録する

取引先からの入金で、名義に「テスウリヨウ」を含まない振込手数料差引額

誤って当たったルール:売掛金(入金額54,340円だけを消込)

差額が残る。入金ルールは消込の画面で差額を確認する運用にする

家賃と同じ管理会社への更新料

誤って当たったルール:地代家賃

金額条件がなかった。「毎月同額」の条件を付け、外れた明細は未処理に残す

2つ目の例を仕訳で見てみます。

売掛金55,000円に対し、振込手数料660円を差し引いた54,340円が入金された場合、正しくは次のとおりです。

手数料差引入金の正しい仕訳
借方金額貸方金額
普通預金54,340売掛金55,000
支払手数料660

仮にルールが入金額54,340円だけで売掛金を消し込むと、売掛金が660円残り、月末の取引先別残高が合わなくなります。

なお、この仕訳は差し引かれた入金を受け取った側の処理です。中小受託取引適正化法(取適法。旧下請法)の対象取引では、発注側が振込手数料を代金から差し引くこと自体が、事前に合意があっても「減額」として禁止されています。(参考:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」Q99)フリーランス法の対象取引でも減額に当たる場合があるため、公正取引委員会の案内で確認してください。

月次での確認手順

  1. 取込漏れを確認する全口座・全カードで、当月末日までの明細が取り込まれているか(取込エラーで止まっていないか)を確認する
  2. 未処理件数を記録する未処理明細の件数を記録する。ルール外の取引がどれだけ残ったかの指標になる
  3. 科目別に前月と比べるルールで登録された仕訳を勘定科目別に並べ、前月と比べて金額や件数が不自然に増えた科目を開く
  4. ルール化を検討する未処理のまま残った明細のうち、同じ摘要が3か月続いたものはルール化を検討し、設計表に追記する
  5. 預金残高を照合する預金残高を通帳・Web明細と照合する

残高照合を含む締め全体の流れは月次決算チェックリストに組み込んでおくと漏れません。

CSVをExcelで前処理する例

CSV取込の口座は、取り込む前にExcelで表記を整えると、ルールの当たりがよくなります。

例えば、C列に摘要が入っているとして、次のような列を足します。

摘要の表記を揃える(前後の空白を除き、全角英数カナを半角にする)

=ASC(TRIM(C2))

ルール表で科目を仮判定する

=XLOOKUP(TRUE, ISNUMBER(SEARCH(ルール!$A$2:$A$11, F2)), ルール!$B$2:$B$11, “要確認”)

2つ目の式は、別シート「ルール」のA列にキーワード、B列に科目を優先順位の順に並べておくと、上から最初に当たったキーワードの科目を返します。

当たらなければ「要確認」と表示されるので、ルール外の取引が一目で分かります。F列は1つ目の式の結果の列です。

使えるExcelのバージョン

XLOOKUPはExcel 2021以降やMicrosoft 365で使える関数です。関数の組み合わせ方は経理のExcel術で詳しく紹介しています。

よくある失敗と防ぎ方

ルールに「自動で登録まで行う」設定を最初から使う

最初の2〜3か月は候補の提示だけにし、誤判定がないことを確かめてから自動登録に切り替える

担当者ごとにルールを追加し、似たルールが重複する

ルールの追加・変更は設計表を更新してから行い、変更日と理由を記録する

取引先の社名変更や口座変更でルールが当たらなくなる

月次の未処理件数が急に増えたら、摘要の変化を最初に疑う

カード明細の利用日と引落日を混同する

費用は利用日で計上し、口座からの引落しは未払金の消込として処理するルールに分ける

自動化は一度作って終わりではなく、月次の確認で見つかったずれを設計表に戻すことで精度が上がっていきます。

一方、ルールに向かない源泉所得税の計算などは、源泉所得税逆算ツールのような専用ツールで確認する方法もあります。

よくある質問

自動仕訳ルールに向く取引・向かない取引は?

相手先が決まれば内容も決まり、金額や税区分が一定で毎月・毎週発生する取引(家賃、電話代、リース料など)は自動化に向きます。同じ相手先で内容が変わる、金額で資産計上か費用かが分かれる、税区分の確認が要る、請求書と突き合わせて消込が必要といった取引は、ルールで決め打ちせず未処理のまま残して人が確認します。

自動仕訳ルールの優先順位はどう決める?

複数のルールに当てはまる明細は上位のルールが適用される作りが一般的なため、具体的な条件のルールほど上に置くのが原則です。キーワードが短すぎたり順番が逆だったりすると、電話会社の関連会社からのリース料が通信費になるといった誤判定が起きます。

自動仕訳の精度を上げるにはどうすればいい?

月次で取込漏れ、未処理件数、科目別の前月比較を確認し、見つかったずれを設計表に戻すことで精度が上がっていきます。また、最初の2〜3か月は候補の提示だけにし、誤判定がないことを確かめてから自動登録に切り替えます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務等の個別の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。