この記事のポイント
- 源泉所得税と住民税の納期の特例は、申請先と区切りが違う
- 3月決算法人の月別期限一覧と、前倒しで始める準備のタイミング
- 期限が休日なら翌平日に繰り下がるため、毎年公式情報で日付を確認する
経理の仕事には、毎月の締めとは別に「年に1回だけ来る期限」がいくつもあります。特に年1回の作業は手順を忘れやすく、担当者が替わった年に漏れが起きがちです。
この記事では、3月決算の中小法人(従業員10人未満、2026年4月1日〜2027年3月31日の事業年度)を例に、主な申告・納付期限を月別に一覧にし、いつから準備を始めればよいかを整理しました。
自社の決算月や届出の状況に合わせて書き換え、社内カレンダーの元資料として使ってください。
毎月来る期限と「納期の特例」
まず毎月の定例から整理します。給与や報酬から差し引いた源泉所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。
住民税の特別徴収分も、原則は給与から差し引いた月の翌月10日までです。
ただし、給与の支払を受ける人が常時10人未満の事業所は、承認を受ければ納付を年2回にまとめられます(納期の特例)。(参考:国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」)源泉所得税と住民税では申請先と区切りが違うので、混同しないよう表にしておきます。
| 税目 | 原則 | 納期の特例(承認を受けた場合) | 申請先 |
|---|---|---|---|
| 源泉所得税 | 翌月10日 | 1〜6月分→7月10日/7〜12月分→翌年1月20日 | 税務署 |
| 住民税(特別徴収) | 翌月10日 | 6〜11月分→12月10日/12〜5月分→6月10日 | 各市区町村 |
特例の対象は一部の所得だけ
納期の特例の対象は給与や税理士報酬など一部の所得に限られ、たとえばデザイナーへの原稿料などは特例を受けていても翌月10日が期限です。
なお、報酬の源泉徴収額は源泉所得税逆算ツールで確認できます。
3月決算法人の月別期限一覧
下表は法令上の期限日で、毎月の源泉所得税・住民税(原則の場合)は省いています。また、中間申告は前期の税額が一定額を超える場合だけ必要です。
期限が休日に当たる年は翌平日に繰り下がります。たとえば2026年5月31日は日曜日のため、前期分の申告・納付の実際の期限は6月1日(月)です。
| 月 | 期限 | 内容 | 提出・納付先 |
|---|---|---|---|
| 5月 | 31日 | 前期(2026年3月期)の法人税・消費税・法人住民税・事業税の申告と納付 | 税務署・都道府県・市区町村 |
| 6月 | 10日 | 住民税の特例分(12〜5月分)納付。新年度の特別徴収税額の通知を受けて6月分から給与控除額を切り替え | 市区町村 |
| 6〜7月 | 6月1日〜7月10日 | 労働保険の年度更新(前年度の確定保険料と今年度の概算保険料) | 労働局・労働基準監督署など |
| 7月 | 1日〜10日 | 算定基礎届(4〜6月の報酬をもとに標準報酬月額を決定) | 日本年金機構 |
| 7月 | 10日 | 源泉所得税の特例分(1〜6月分)納付 | 税務署 |
| 賞与月 | 支給日から5日以内 | 健康保険・厚生年金保険の賞与支払届 | 日本年金機構(健保組合加入なら組合にも) |
| 11月 | 30日 | 法人税・消費税の中間申告と納付(該当する場合) | 税務署ほか |
| 12月 | 10日 | 住民税の特例分(6〜11月分)納付 | 市区町村 |
| 12月〜1月 | 最終給与の支給時 | 年末調整(扶養控除等申告書などの回収と過不足精算) | 社内 |
| 1月 | 20日 | 源泉所得税の特例分(7〜12月分、年末調整の精算を含む)納付 | 税務署 |
| 1月 | 31日 | 法定調書合計表、給与支払報告書、償却資産申告(1月1日現在の資産)、源泉徴収票の本人交付 | 税務署・市区町村 |
| 3月 | 31日 | 決算日。棚卸・残高確認の準備 | 社内 |
| 5月 | 31日 | 当期(2027年3月期)の確定申告と納付 | 税務署・都道府県・市区町村 |
消費税の中間申告は回数で期限が変わる
消費税の中間申告は、前期の消費税額(国税分)が48万円を超えると年1回、400万円を超えると年3回、4,800万円を超えると年11回と、回数と期限が変わります。(参考:国税庁「No.6609 中間申告の方法」)
そこで、自社の回数と期限は消費税中間申告額・納付期限シミュレーターで確認し、納付額の国税・地方税の内訳は消費税中間納税額の分解ツールで出せます。
申告期限の延長と納付期限は別物
定款で定時株主総会を決算日から3か月以内に開くと定めている会社などは、申請により法人税の申告期限を1か月延長できる特例があり、要件を満たせば消費税も届出で延長できます。
延長されるのは申告期限
ただし延長されるのは申告期限で、延長期間分には利子税がかかります。
延長の有無は会社ごとの届出状況によるため、過去の申告書控えや顧問税理士に確認してください。
期限が土日祝に当たる場合
国税や社会保険の期限が土曜・日曜・祝日などの休日に当たるときは、その翌日(休日明けの平日)が期限になります。
たとえば2027年1月31日は日曜日のため、法定調書合計表などの期限は2月1日(月)です。同様に、2027年1月10日も日曜日で、翌11日が成人の日のため、源泉所得税(原則の12月支払分)の期限は1月12日(火)になります。
地方税や自治体の手続きも同様の扱いが一般的です。ただ、祝日の変更や自治体の案内もあります。
そのため、毎年、国税庁・日本年金機構・各自治体の公式情報で日付を確認してから社内カレンダーに登録しましょう。
登録は次の順で行うと漏れにくくなります。
- 自社に合わせて修正上の一覧表を自社の決算月・特例の有無に合わせて修正する
- 当年の日付を確認公式の案内で当年の日付を確認し、休日による繰り下がりを反映する
- 社内締切を登録期限日とは別に、5営業日前を「社内締切」として登録する
- 担当者と控えの場所を書く各予定に担当者と、前年の控えの保存場所を書き込む
準備を前倒しするためのチェックリスト
| 確認 | いつ始めるか | 準備すること |
|---|---|---|
| □ | 3月上旬 | 棚卸の日程、残高確認書の送付先、決算整理事項のリストを決める |
| □ | 5月中旬 | 労働保険の年度更新に使う前年度の賃金集計(4月〜翌3月)を作る |
| □ | 5月下旬 | 市区町村から届く住民税の税額通知を従業員別に給与ソフトへ登録 |
| □ | 6月末 | 4〜6月の報酬を集計し、算定基礎届の下書きを作る |
| □ | 10月 | 中間申告の要否と方法(前期実績か仮決算か)を決め、納付資金を確保 |
| □ | 10〜11月 | 年末調整用の申告書を配付し、回収期限を決める。支払調書の対象者リストを作る |
| □ | 12月 | 償却資産の増減を固定資産台帳から抽出し、給与支払報告書の提出先(1月1日現在の住所地)を確認 |
前年の控えを残す
年1回の作業ほど、前年の控えがあれば半分の時間で終わります。
そのため、提出した書類はスキャンして年度別フォルダに保存しておくと翌年探さずに済みます(方法は紙書類のデジタル化を参照)。
また、毎月の締めの段取りは月次決算チェックリストにまとめています。
期限まわりでよくある間違い
納期の特例を受けているつもりで、実は承認を受けていない
毎月の納付が遅れ、不納付加算税や延滞税の対象になる
承認通知の控えを確認し、社内カレンダーに根拠を書いておく
源泉所得税と住民税の特例の区切りを取り違える
6月・12月の納付漏れ
上の表のように税目別に分けて管理する
申告期限の延長を納付期限の延長と誤解する
利子税が生じる
見込み額を本来の期限までに納める運用を検討する
賞与支払届を月次の手続きと一緒に後回し
5日以内の期限を過ぎる
賞与の支給決定時に提出日も決める
前年の期限日をそのまま転記
曜日による繰り下がりを見落とす
毎年、公式のカレンダーで日付を引き直す
期限の一覧は、作った年だけでなく毎年3月ごろに見直すのがおすすめです。
従業員数が10人以上になった、中間申告の回数が変わった、決算月を変更したといった変化があると、期限そのものが変わります。
そこで、表の右端に「根拠(届出・通知の日付)」の列を足しておくと、担当者が交代しても判断を引き継げます。
よくある質問
源泉所得税の納期の特例とは?
給与の支払を受ける人が常時10人未満の事業所が、承認を受けて源泉所得税の納付を年2回にまとめられる制度です。1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日が期限で、申請先は税務署です。対象は給与や税理士報酬など一部の所得に限られます。
3月決算法人の法人税・消費税の申告期限はいつまで?
原則として5月31日までに申告と納付をします。期限が休日に当たる年は翌平日に繰り下がり、たとえば2026年5月31日は日曜日のため、実際の期限は6月1日(月)です。
法人税の申告期限を延長すると納付期限も延びますか?
延びません。延長されるのは申告期限で、延長期間分には利子税がかかります。延長の有無は会社ごとの届出状況によるため、過去の申告書控えや顧問税理士に確認してください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務等の個別の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。
