この記事のポイント
- 振込名義で取引先を、金額で請求書を特定し、特定できない入金は仮受金に計上して期限を決める
- 一括・分割・過入金・不足入金はケース別の処理を決めておき、判断で作業を止めない
- 月末に売掛金残高表(年齢表)を作り、合計を総勘定元帳の売掛金残高と一致させる
入金消込は、銀行口座に入ったお金が「どの請求書の代金か」を特定し、売掛金を減らしていく作業です。
件数が少ないうちは通帳を見ながらでも回りますが、取引先が増えると、名義が違う入金や金額が合わない入金が必ず出てきます。そこで判断に迷うたびに作業が止まり、売掛金の残高が実態とずれていきます。
この記事では、消込の手順と、迷いやすいケースの処理を仕訳つきで整理します。
消込の基本手順
- 入金明細を取り込むネットバンキングの明細を会計ソフトに連携するか、CSVで出力する
- 未入金の請求一覧を用意する請求書番号・取引先・請求額・支払期日の一覧を、入金予定日順に並べる
- 振込名義から取引先を特定する明細のカナ名義を取引先マスタの「入金名義」と照合する
- 金額で請求書を特定する請求額と一致すれば消込、一致しなければ下のケース別処理へ回す
- 仕訳と記録仕訳を登録し、請求一覧に入金日と「消込済」を記録する
- 特定できない入金は仮受金へその日のうちに特定できなかった入金は仮受金に計上し、確認担当と期限を決める
手順2の一覧をExcelで管理する場合は、請求書番号をキーにしてXLOOKUPなどで入金額を引く形にすると照合が速くなります(関数の使い方は経理のExcel術を参照)。
消込のタイミング
また、消込は月末にまとめず、入金のあった日か週1回は行うのが基本です。
振込名義と取引先マスタの照合ルール
入金明細の名義は振込人が入力した半角カナで、請求先の正式名称と一致しないことがよくあります。
そのため、取引先マスタに「入金名義」の欄を設け、1社につき複数の名義を登録できるようにしておくのが実務的です。
| 明細の名義の例 | よくある理由 | マスタでの扱い |
|---|---|---|
| カ)ヤマダシヨウジ | 法人略語と小さいカナの置き換え(ョ→ヨ) | 請求先の正式名称とは別に、カナ名義を登録 |
| ヤマダ タロウ | 代表者の個人口座から支払った | 初回に先方へ確認したうえで追加登録 |
| (カ)ヤマダホールディングス | 親会社・グループ会社がまとめて支払った | 支払元の名義として子会社の取引先に紐づける |
| 1052 カ)ヤマダシヨウジ | 依頼人名の前に請求書番号を入れてもらった | 番号で請求書を直接特定できる |
請求書に「お振込の際は依頼人名の前に請求書番号をご入力ください」と書いておくと、同じ取引先から複数の入金がある場合の特定が楽になります(請求書の記載事項は請求書の作り方で解説しています)。
金額が近いだけで消し込まない
さらに、名義が登録にない入金を、金額が近いという理由だけで消し込まないことも重要なルールです。
ケース別の処理と仕訳例
A社に次の2件を請求している前提で見ていきます(金額は税込、仮の数字です)。
No.1051:330,000円(期日10月31日)、No.1052:165,000円(期日10月31日)。
複数の請求をまとめて入金された
495,000円が1回で入金された場合、330,000+165,000=495,000円で2件の合計と一致するので、両方を消し込みます。
ただ、仕訳は1本でも、請求一覧では2件それぞれに入金日を記録します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 495,000 | 売掛金(A社) | 495,000 |
分割で入金された
No.1051について、分割払いの合意に基づき10月に200,000円が入金された場合、入金額だけ売掛金を減らし、残り130,000円は売掛金のまま残します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 200,000 | 売掛金(A社) | 200,000 |
請求一覧には「一部入金 200,000/残 130,000」と記録し、残額の入金予定日を書いておきます。
一方、合意のない一部入金であれば、先方に残額の支払予定を確認します。
過入金(多く振り込まれた)
No.1052の165,000円に対して330,000円が入金された、つまり二重払いと思われる場合です。
先方に連絡し、返金するか次回請求と相殺するかを決めるまでは、超過分を仮受金にしておきます。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 330,000 | 売掛金(A社) | 165,000 |
| 仮受金 | 165,000 |
その後、返金するなら返金時に「仮受金/普通預金」、次回請求に充てると合意したなら「仮受金/前受金」に振り替え、次回の売上計上時に前受金を充当します。
仮受金にしておく
相殺かを決める
充当:仮受金/前受金
不足入金(少なく振り込まれた)
差額が振込手数料相当額で、取引条件上も先方負担を認めている場合は、差額を支払手数料などで処理します。
ただし、自社が中小受託取引適正化法(取適法。旧下請法)の対象取引の受託側である場合、2026年1月1日以降は、発注側が振込手数料を代金から差し引くこと自体が、事前の合意があっても「減額」として禁止されています。(参考:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」)フリーランス法の対象取引でも、報酬からの差し引きが減額に当たる場合があるため、公正取引委員会の案内で確認してください。(参考:公正取引委員会「フリーランス法 Q&A」)
仕訳と消費税の扱いは総合振込の実務ガイドの「受取側の仕訳」で詳しく説明しているので、ここでは繰り返しません。
これに対して、それ以外の差額は、値引きの合意や返品がないかを営業担当に確認し、理由が分かるまでは売掛金の残高として残しておきます。
前受金と仮受金の使い分け
| 科目 | 使う場面と、その後の処理 |
|---|---|
| 前受金 | 内容が分かっている、商品の引渡しやサービスの提供前に受け取った代金(前金・着手金など) その後:引渡し・提供時に売上へ振り替える |
| 仮受金 | 誰から・何の入金か分からない、または処理方法が決まっていない入金 その後:判明した時点で売掛金・前受金などに振り替える |
前受金は受け取った時点では売上ではなく、消費税も原則として引渡し等の時点で課税売上になります。
他方、仮受金は一時的な置き場です。そのため、月末に残高の内訳を確認し、長く残っているものから解消します。
売掛金残高表(年齢表)のテンプレート
消込の結果は、月末に取引先別・経過日数別の残高表にまとめます。
特に、支払期日を基準に区分すると、回収が遅れている先がひと目で分かります。
下表は10月31日時点で作成した例です。A社の残額130,000円は、分割の合意で残額の支払期日を11月末としているため「期日前」に区分しています。
| 取引先 | 残高 | 期日前 | 超過30日以内 | 31〜60日 | 61日以上 | 対応状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A社 | 130,000 | 130,000 | 0 | 0 | 0 | 分割の残額、11月末入金予定 |
| B社 | 88,000 | 0 | 88,000 | 0 | 0 | 10/5に入金予定日を確認済み |
| C社 | 55,000 | 0 | 0 | 0 | 55,000 | 請求書の再送と責任者への報告 |
| 合計 | 273,000 | 130,000 | 88,000 | 0 | 55,000 |
合計は元帳と一致させる
表の合計は、必ず総勘定元帳の売掛金残高と一致させます。
一致しない場合は、消込済みにしたのに仕訳がない、またはその逆のケースがほとんどです。
なお、月次の残高照合の流れは月次決算チェックリストにまとめています。
消込でよくある間違い
同額の請求が複数あるとき、古い請求から機械的に消し込む
先方の認識と合わず、督促の相手を間違える
請求書番号の入力依頼や支払通知書で特定する
不明入金をとりあえず売上で計上
売上の二重計上、売掛金が消えずに残る
不明なものは仮受金に入れ、期限を決めて確認する
差額を理由不明のまま雑損失で処理
本来回収すべき代金を放棄したことになる
手数料以外の差額は必ず理由を確認する
入金名義の追加登録を個人のメモで管理
担当者が替わると照合できなくなる
取引先マスタに登録し、登録日と確認方法も残す
会計ソフトの中には、入金名義と取引先の対応を学習して消込候補を出す機能を備えたものもあります。ソフトを選ぶときの判断基準(銀行・カードの連携など)はクラウド会計ソフトの選び方で整理しています。
ただし、自動の候補をそのまま確定させず、名義と金額の両方が合っているかを人が確認する運用にしておくと安心です。
よくある質問
売掛金の入金消込とは?
銀行口座に入ったお金が「どの請求書の代金か」を特定し、売掛金を減らしていく作業です。振込名義で取引先を、金額で請求書を特定し、月末にまとめず入金のあった日か週1回は行うのが基本です。
誰から・何の入金か分からないときはどう処理する?
仮受金に計上し、確認担当と期限を決めます。判明した時点で売掛金・前受金などに振り替え、月末に残高の内訳を確認して長く残っているものから解消します。
振込手数料を差し引いて入金されたときの仕訳は?
差額が振込手数料相当額で、取引条件上も先方負担を認めている場合は、差額を支払手数料などで処理します。ただし、自社が取適法の対象取引の受託側である場合、2026年1月1日以降は、発注側が振込手数料を代金から差し引くこと自体が禁止されています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務等の個別の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。
