この記事のポイント
- フォルダは見せる相手が変わる区切りを最上位に置くと、権限設定が単純になる
- アクセス権は閲覧・編集・削除を分け、削除できる人を経理責任者1人に絞る
- 年度フォルダに廃棄可能日を書き、退職時は所有者の移管を先に済ませる
請求書や領収書をデータで持つようになると、次に困るのが「どこに置き、誰が触れて、いつまで残すか」です。
個人のパソコンやメールの添付に散らばったままでは、担当者が休んだ日に書類が見つからず、退職と同時にデータが消えることもあります。
この記事では、クラウドストレージに経理書類を保管するときの社内ルールを、そのまま規程に転記できる形でまとめます。
スキャンの設定やファイル名の付け方は「紙書類のデジタル化」、ペーパーレス化全体の進め方は「ペーパーレス経理5ステップ」で扱っているので、ここでは保管後の管理に絞ります。
フォルダ階層は「権限の境目」を最上位に置く
書類を探しやすくする基本は「年度→書類の種類→月」の3階層です。
さらに、クラウドで運用するときは、その上にもう1段、閲覧できる人の範囲が変わる区切りを置くと、アクセス権の設定が単純になります。多くのクラウドストレージでは、権限は親フォルダから子フォルダへ引き継がれるためです。
| 最上位フォルダ | 中に入れるもの | 下の階層 |
|---|---|---|
| 10_経理_取引書類 | 受取・発行した請求書、領収書、見積書、納品書、経費精算の証憑 | 2026年度/01_受取請求書/2026-10 |
| 20_経理_帳簿・決算 | 会計ソフトから出力した帳簿、決算書、申告書の控え | 2026年度/01_月次試算表・02_決算書・03_申告書控 |
| 30_給与・人事 | 給与明細、賃金台帳、源泉徴収票、社会保険の書類 | 2026年度/書類の種類 |
| 40_契約書 | 取引先との契約書・覚書(年度ではなく取引先別) | 取引先名/契約書ファイル |
| 90_アーカイブ | 保存期間中だが日常的には使わない過去年度 | 移動した年度フォルダ |
給与・人事は分けておく
給与・人事を経理書類と同じフォルダに入れると、取引書類を見るだけの人にも個人の給与が見えてしまいます。
そのため、見せる相手が違う書類は、最上位の段階で分けておくのがポイントです。
アクセス権は「閲覧・編集・削除」を分けて表にする
| フォルダ | 経理責任者 | 経理担当 | 一般社員 | 顧問税理士・外部委託先 |
|---|---|---|---|---|
| 10_経理_取引書類 | 閲覧・編集・削除 | 閲覧・編集 | 「00_受付」への追加のみ | 閲覧 |
| 20_経理_帳簿・決算 | 閲覧・編集・削除 | 閲覧・編集 | なし | 閲覧 |
| 30_給与・人事 | 閲覧・編集・削除 | 担当者のみ閲覧・編集 | なし | 委託範囲のみ閲覧 |
| 40_契約書 | 閲覧・編集・削除 | 閲覧 | 担当部署のみ閲覧 | 必要時に個別共有 |
| 90_アーカイブ | 閲覧・削除 | 閲覧 | なし | なし |
削除できる人を経理責任者1人に絞るのが最も効果的です。
電子帳簿保存法の電子取引データの保存では、訂正・削除を防ぐための事務処理規程を定めて運用する方法が認められており、「誰が削除できるか」を決めておくことはその規程の実態づくりにもなります。(参考:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」)
外部の専門家や委託先に見せる場合の範囲の決め方は「バックオフィスのアウトソーシング」もあわせて参考にしてください。
共有リンクの運用ルール
「リンクを知っている全員が閲覧可」のリンクは便利ですが、メールの転送やチャットへの貼り付けで、意図しない相手に届くおそれがあります。
そこで、次のような社内ルールを決めておきます。
- 社外への共有は、相手のアカウントを指定する方式を原則にし、「リンクを知っている全員」は使わない
- やむを得ず一般公開リンクを使う場合は、有効期限とパスワードを設定できるサービスなら必ず設定する
- フォルダ単位ではなくファイル単位で共有し、「編集可」では共有しない
- 共有した日・相手・ファイル・期限を共有台帳に記録し、月次決算のついでに不要な共有を解除する
保存期間表と期限の数え方
法人の場合、税法と会社法で保存期間の定めがあります。2026年9月時点の主なものは次のとおりです。
| 書類 | 根拠 | 保存期間の目安 |
|---|---|---|
| 帳簿、請求書・領収書などの取引書類(電子取引データを含む) | 法人税法 | 申告期限の翌日から原則7年 |
| 上記のうち欠損金が生じた事業年度のもの | 法人税法 | 申告期限の翌日から10年 |
| 会計帳簿と事業に関する重要な資料 | 会社法 | 帳簿の閉鎖の時から10年 |
| 計算書類(貸借対照表・損益計算書等)と附属明細書 | 会社法 | 作成した時から10年 |
給与や労務の書類は労働基準法などで別の期間が定められているため、該当する法令で確認してください。なお、個人事業主は書類の種類によって5年または7年です。
計算例:3月決算の会社の2026年3月期
計算例として、3月決算の会社の2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)で考えます。
申告期限の延長がなければ、申告期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内の2026年5月末ごろです。税法上の7年はその翌日から数えるため2033年5月末ごろまで、欠損金が出た年度なら2036年5月末ごろまでとなります。(参考:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」)
一方、会社法の会計帳簿は2026年3月末の閉鎖から10年の2036年3月末までです。
- 2026年3月末事業年度終了・会計帳簿の閉鎖
- 2026年5月末ごろ申告期限(延長がない場合)
- 2033年5月末ごろ税法上の7年の保存期間が終わる
- 2036年3月末会社法の会計帳簿の10年が終わる
- 2036年5月末ごろ欠損金が出た年度の10年が終わる
廃棄可能日を書いておく
実務では、帳簿と決算書類は会社法に合わせて10年、取引書類は欠損金の有無で7年か10年、と年度フォルダごとに「廃棄可能日」を書いておくと迷いません。
ただし、欠損金が生じた事業年度の帳簿は、税法上「申告期限の翌日から10年」(例では2036年5月末ごろ)まで必要です。会社法の10年(2036年3月末)で先に捨てないよう、遅いほうの日を廃棄可能日にします。
アーカイブと廃棄の手順
- アーカイブへ移す決算・申告が終わったら、2期前の年度フォルダを「90_アーカイブ」へ移し、フォルダ名に「廃棄可能日_2033-05」のように期限を付ける
- 期限切れを一覧にする年1回、アーカイブ内で廃棄可能日を過ぎたフォルダを一覧にする
- 経理責任者が確認する係争中の取引、税務調査で指摘を受けた年度、欠損金を繰り越している年度に当たらないか、経理責任者が確認する
- 承認を得て削除する社長の承認を得てから削除し、ごみ箱からも完全に削除する
- 廃棄記録を残す削除した年度・フォルダ名・日付・承認者を廃棄記録に残す
退職者のアカウント処理チェックリスト
- 退職の連絡を受けたら本人の個人フォルダやマイドライブにある経理書類を洗い出し、共有フォルダへ移す日を決める
- 最終出社日の前本人が作成した共有リンクを一覧にし、必要なものは会社のアカウントで作り直す
- 最終出社日クラウドストレージのアカウントを停止し、所有者を経理責任者へ移す
- 同日会計ソフト・経費精算システム・ネットバンキングの利用者も削除または停止する
- 1週間後ファイルの所有者に退職者の名前が残っていないか、共有メンバーを確認する
削除の前に所有者を移す
アカウントを削除すると、その人が所有していたファイルも一緒に消えるサービスがあります。
したがって、削除の前に「所有者の移管」を済ませる順番を守ることが大切です。
ネットバンキングの利用者削除については「法人口座の選び方チェックリスト」でも触れています。
よくある事故と防止策
同期フォルダで誤って削除し、全員のパソコンから消えた
削除権限を絞り、ごみ箱やバージョン履歴の保持期間を確認しておく
給与明細を取引書類のフォルダに保存し、全社員が閲覧できた
最上位フォルダで権限を分け、保存先を迷う書類は経理責任者に確認する
社外に送った共有リンクが何年も有効なまま残っていた
共有台帳に期限を書き、月次で棚卸しする
担当者の個人アカウントにしか書類がなかった
会社の組織アカウントの共有フォルダ以外に保存しないルールにする
保存期間内の年度フォルダをまとめて消した
フォルダ名に廃棄可能日を入れ、承認付きの手順でしか削除しない
会計ソフトに証憑を添付して保管できる場合は、ストレージと二重管理にならないよう「正本はどちらか」を決めておきます。
会計ソフトの機能の違いは「会計ソフトの比較」で紹介しています。
よくある質問
経理書類をクラウドで保管するときのフォルダ構成はどうすればいい?
「年度→書類の種類→月」の3階層を基本にし、その上に閲覧できる人の範囲が変わる区切り(取引書類、帳簿・決算、給与・人事、契約書、アーカイブ)を最上位フォルダとして置きます。多くのクラウドストレージでは権限が親フォルダから子フォルダへ引き継がれるため、こうすると権限設定が単純になります。
クラウドに保管した経理書類はいつまで保存が必要?
法人の場合、帳簿や請求書・領収書などの取引書類は法人税法で申告期限の翌日から原則7年(欠損金が生じた事業年度は10年)、会計帳簿と事業に関する重要な資料は会社法で帳簿の閉鎖の時から10年です。実務では年度フォルダごとに、遅いほうの日を「廃棄可能日」として書いておくと迷いません。
退職者のクラウドストレージのアカウントはどう処理する?
アカウントを削除する前に、ファイルの所有者を経理責任者へ移す「所有者の移管」を済ませます。アカウントを削除すると、その人が所有していたファイルも一緒に消えるサービスがあるためです。あわせて、本人が作成した共有リンクの作り直しや、会計ソフト・経費精算システム・ネットバンキングの利用者の削除または停止も行います。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務等の個別の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。
