小口現金の管理方法:金種表・仕訳・キャッシュレス化の進め方

小口現金の管理方法:金種表・仕訳・キャッシュレス化の進め方

この記事のポイント

  • 定額資金前渡法なら「定額−手元残高=使った金額」の検算がいつでもできる
  • 毎日の締めは金種表で実際有高を出し、原因が分からない差額は現金過不足として記録する
  • 管理の手間が大きい小口現金は、法人カードや立替精算へのキャッシュレス化で減らしていく

小口現金は金額こそ小さいものの、毎日の記帳と残高確認が欠かせず、合わない日が続くと原因探しに時間を取られます。

この記事では、定額資金前渡法の仕組みと仕訳、金種表を使った締めの手順、現金過不足の処理を、金額を置いて最後までたどります。

さらに後半では、小口現金そのものを減らすキャッシュレス化の進め方も整理します。

定額資金前渡法(インプレスト・システム)の仕組み

定額資金前渡法は、小口現金の担当者に一定額(例:30,000円)を渡しておき、一定期間ごとに使った分だけを補給して元の金額に戻す方法です。

いつでも検算できる

補給直後の手元残高は常に定額になります。そのため、次の検算がいつでもできます。

定額−手元残高=使った金額(領収書の合計)

たとえば、定額30,000円で週1回(金曜日)補給する会社で、ある週に次の支払いがあったとします(税込経理、消費税の区分は省略)。

  • 電車代・バス代:4,280円(旅費交通費)
  • 郵便切手・宅配便:2,940円(通信費)
  • 文具・電池:5,500円(消耗品費)
  • 来客用の茶菓子:1,210円(会議費)

支払いの合計は4,280+2,940+5,500+1,210=13,930円で、帳簿上の残高は30,000−13,930=16,070円です。

制度開始時定額 30,000円 を
担当者に渡す
週末の報告支払い合計 13,930円
帳簿上の残高 16,070円
補給使った 13,930円 を
補給して元の金額に戻す
制度開始時
借方金額貸方金額
小口現金30,000普通預金30,000
週末の報告
借方金額貸方金額
旅費交通費4,280小口現金13,930
通信費2,940
消耗品費5,500
会議費1,210
補給
借方金額貸方金額
小口現金13,930普通預金13,930

ここでは手元の現金が帳簿どおりだった場合の補給額です。実際に数えて差額がある場合は補給額が変わります(後述の例では14,030円)。

報告と補給を同じ日に行う場合は、小口現金を借方・貸方の両方に書かず、費用の各科目/普通預金13,930円の1本にまとめても結果は同じです。

一方、会計ソフトで小口現金の残高推移を確認したい場合は、上の2本に分けておくほうが追いやすくなります。

小口現金出納帳の書式例

日付摘要
(支払先・内容・使用者)
受入支払科目残高領収書No.
9/28前週より繰越30,00030,000
9/28JR 新宿→品川 往復 B4,280旅費交通費25,72001
9/29郵便局 切手・ゆうパック C2,940通信費22,78002
9/30文具店 ファイル・電池 C5,500消耗品費17,28003
10/1菓子店 来客用茶菓子 B1,210会議費16,07004

領収書に出納帳と同じ番号を書き込み、番号順に台紙へ貼るか、スキャンして同じ番号をファイル名に付けておくと、補給時の照合が速くなります。

また、スキャン保存の要件やファイル名の付け方は「紙書類のデジタル化」、Excelで出納帳を作る場合の入力規則や集計は「経理のExcel術」が参考になります。

金種表テンプレートと毎日の締め手順

10/1の終業時に手元の現金を数えた結果が次の金種表です。

金種枚数金額
10,000円110,000
5,000円00
1,000円55,000
500円1500
100円4400
50円150
10円220
5円・1円00
実際有高 合計15,970
出納帳残高16,070
差額(実際有高−帳簿残高)−100

なお、2,000円札の行も、受け取る可能性があるなら残しておきます。

毎日の締めは次の順番で行います。

  1. 記帳を確認するその日の領収書がすべて出納帳に記帳され、番号が振られているか確認する
  2. 金種表で数える金種ごとに枚数を数えて金種表に記入し、合計(実際有高)を出す
  3. 差額の原因を探す出納帳の残高と比べ、差額があれば領収書の記帳漏れ・金額の転記ミス・釣銭の受け取り漏れの順に確認する
  4. 現金過不足に記録する原因が分からない差額は、その日のうちに現金過不足として記録する
  5. 記名して施錠保管する金種表に数えた人と確認者が記名し、現金と一緒に施錠保管する

現金過不足の仕訳(期中と決算時)

上の例では、実際有高が帳簿より100円少ないため、帳簿を実際に合わせます。

その後、原因が分かれば正しい科目に振り替えます。一方、決算日まで分からなければ雑損失とします。

不足の判明時(期中)
借方金額貸方金額
現金過不足100小口現金100
原因判明(切手代の記帳漏れ)
借方金額貸方金額
通信費100現金過不足100
決算日まで原因不明の場合
借方金額貸方金額
雑損失100現金過不足100

逆に現金が多い場合は「小口現金/現金過不足」と記録し、決算日まで原因不明なら「現金過不足/雑収入」で振り替えます。

決算日当日に見つかった差額

ただし、決算日当日の実査で初めて差額が見つかった場合は、現金過不足を経由せず直接雑損失・雑収入に計上します。

また、現金過不足は仮の科目です。そのため、月次決算のたびに残高と原因の調査状況を確認し、期末に残さないようにします(月次決算チェックリスト)。

補給額を確かめる

なお、差額を出したあとの補給額は、定額30,000円−実際有高15,970円=14,030円です。

支払13,930円と不足100円の合計と一致していることを確認してから補給します。

よくある不正・ミスと防止策

担当者が一時的に私的に借りて、補給前に戻す

補給日以外にも抜き打ちで実査する。借用メモでの貸し出しを認めない

同じ領収書を小口現金と立替精算の両方に出す

使用済みの領収書に「小口精算済」と記入し、番号を振る

現金の出し入れと記帳を同じ人が行い、差額を隠す

出納担当と、補給時に領収書を照合する人を分ける

定額が大きすぎて、差額に気づきにくい

過去数か月の使用額から、1回の補給期間で足りる最小限の定額にする

差額を担当者が自腹で埋めてしまう

差額は必ず現金過不足で記録するルールにし、個人の補填を禁止する

キャッシュレス化の判断基準と移行手順

小口現金は、毎日の実査・記帳・補給と、管理の手間が金額に比べて大きくなりがちです。

まず、出納帳の支払いを支払先別に並べてみて、現金以外で払えるものから移していきます。

支払いの種類移行先の目安
毎月決まった店・サービスへの支払い法人カード、請求書払い(口座振込)
社員の交通費・突発的な少額の購入立替精算(月1回まとめて振込)
通販で買える備品・消耗品法人カード、または請求書払いができる通販
現金しか使えない支払い小口現金を残す(定額を縮小)

移行の5ステップ

  1. 支払いを一覧にする直近3か月の出納帳から、支払先・科目・件数を一覧にする
  2. 移行先を決める上の表で移行先を決め、法人カードを持つ人と利用範囲を決める
  3. 立替精算のルールを決める立替精算の申請ルールと締め日・支払日を決める
  4. 切り替え日を周知する切り替え日を決めて社内に周知し、その日以降は小口現金で払わない
  5. 残りを見直す1〜2か月後に残った現金払いを確認し、定額を減らすか、小口現金を廃止して全額を預金に戻す

廃止する場合の仕訳は「普通預金30,000/小口現金30,000」で、帳簿の残高をゼロにします。

小口現金を廃止する場合
借方金額貸方金額
普通預金30,000小口現金30,000

立替精算の申請項目や仕訳、承認時のチェックは「経費精算の仕組み」にまとめています。

ただし、法人カードに移しても、何のための支出かの記録と領収書の保存が不要になるわけではありません。

具体的には、カードの利用分は利用日で費用に計上し、口座からの引落日は未払金の消込として処理すると、計上月がずれません。

最後に、補給や引落しに使う口座を見直すときは「法人口座・ネット銀行選び」も確認してください。

よくある質問

定額資金前渡法(インプレスト・システム)とは?

小口現金の担当者に一定額を渡しておき、一定期間ごとに使った分だけを補給して元の金額に戻す方法です。補給直後の手元残高は常に定額になるため、「定額−手元残高=使った金額(領収書の合計)」の検算がいつでもできます。

小口現金が帳簿と合わないときはどう仕訳する?

原因が分からない差額は、その日のうちに現金過不足として記録して帳簿を実際有高に合わせ、原因が分かれば正しい科目に振り替えます。決算日まで原因が分からなければ、不足は雑損失、多い場合は雑収入に振り替えます。決算日当日の実査で初めて見つかった差額は、現金過不足を経由せず直接雑損失・雑収入に計上します。

小口現金をなくすキャッシュレス化はどう進める?

直近3か月の出納帳から支払先・科目・件数を一覧にし、毎月決まった支払いは法人カードや請求書払い、社員の交通費などは立替精算へと、現金以外で払えるものから移していきます。1〜2か月後に残った現金払いを確認し、定額を減らすか、小口現金を廃止して全額を預金に戻します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務等の個別の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。